今年の4月から電力の小売り自由化が始まります。従来の電力会社に加えて、ガス会社をはじめ多様な異業種の発電会社そして再生可能エネルギー(自然エネルギー)業者の参入もあります。消費者は、地域をこえ(関西の人が東北の電力会社を選ぶなど)、および多様な電力会社から電気を選択できるのです。関西電力の独占体制が崩れるのです。
消費者は、原発エネルギーか、あるいは再生可能エネルギー(自然エネルギー)かを選択できるようになりました。
ところが、NHK大阪放送局の1月15日(金)放映の「ニュースほっと関西」(18:00から18:30)において、どのように電力会社を選択するかの解説に際して、女子アナウンサーが「高浜原発の再稼働があれば料金が安くなりますので、それを待ちましょう」と、関西電力と原発のスポンサーであるかのような報道をしました。これは消費者の選択の自由を妨げ、特定電力会社を支援し、しかも将来の不確定なことを断定的に報道したものであって、NHKのいう受信料に支えられた公共放送としては、断じて許されないことです。公共放送に値しないなら、受信料を払う必要はありません。
わたしは、金融の公共性研究所名で、次のような公開質問状を送付しました。どのような回答が寄せられるのか、それとも無視されるのか、楽しみです。
NHK大阪放送局「ニュースほっと関西」放送責任者への
公開質問状
1月15日(金)放送時に、4月から始まる電力小売り自由化の会社選びのポイントの報道において、解説者の女子アナウンサーが、公共放送にあるまじき不正確で不適切な解説をしました。それに抗議するとともに、次の4点について、当研究所名で公開質問をいたします。質問内容および貴局のご回答は、当研究所のWebサイトを通じておよびfacebookで、インターネットにて公開しますので、誠実かつ真摯に対応して頂くようお願い申し上げます。
第1に、会社選びの基準を、「料金が安いかどうか」だけで説明したことです。電力取引監視等委員会がまとめた電力小売りのルールでは、小売り業者は電力の電源構成を明らかにし、原発か再生可能エネルギーかを選択できるようにすること、となっています。再生可能エネルギー業者の参入もあります。
それなのに、なぜ料金だけを選択基準と説明されたのか、ご回答願います。
第2に、「高浜原発が再稼働すれば料金が安くなる」と説明されたことです。しかし、これは将来の不確実なことで、原発規制コストの上昇と原油価格の下落で、原発が再稼働すれば料金が安くなると、今の時点で断定することはできません。将来の不確実なことを、原発が有利だと、関西電力のスポンサーのように断定的に報道することは、公共放送として許されません。
この報道姿勢の誤りについて、どのように思われているのか、ご回答願います。
第3に、「高浜原発再稼働ありき」と断定的に、しかも決まっているかのように報道したことです。高浜原発が再稼働できるかどうかは、周辺自治体および住民や国民の世論の動向によります。反対運動が強く反対意見が多ければ再稼働はできません。その世論の今後の動向を無視して、「再稼働ありき」と断定的に決まったことのように誘導報道することは、公共放送として許されません。
この報道姿勢の誤りについて、どのように思われるのか、ご回答願います。
第4に、昨年の国連「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)」の第5次統合報告書は、温暖化対策のためには、再生可能エネルギーの普及が重要であることと、原発はリスクが大きいことを、世界に向けて明快に発信しました。世界の潮流は、再生可能エネルギーと脱原発で動いていますし、それが人類が生き残るための最後の道です。その状況に鑑みて、貴局の報道姿勢は明らかに後ろ向きです。この報道姿勢に問題はないのか、ご回答願います。
ご回答は、抽象的な文言や曖昧な表現でごまかすのではなく、誰にもわかるように、明快に具体的に、上記の4点のそれぞれについてお願いします。
なおこれは視聴者個人の問い合わせではなく、貴局に対する公開質問状であることを念頭において対処されるよう、お願い申し上げます。どのような事情であれ、ご回答無きときは、上記の指摘が正当であったものとして取り扱わせて頂きます。また公開質問状を無視されたことの不利益は、貴局にあります。
なおこの公開質問状は、嫌がらせのたぐいではなく、NHKが公共放送としての姿勢を正し、視聴者に対する信頼を得るためのものですので、そこはお間違えのないよう、誠実に対応して頂くようお願い申し上げます。