ポストプリント「第1次世界大戦後ドイツのハイパー・インフレーション(1)-大規模な貨幣破産・財政破産の発生要因についての解明-」のお知らせ

紀国が本サイトの「公共性研究」ページにプレ・プリントとしてあげていた論文「第1次世界大戦後ドイツのハイパー・インフレーション(1) -大規模な貨幣破産・財政破産の発生要因についての解明-」が、高知大学学術情報リポジトリにアップされましたので、お知らせいたします。

こちらの方は、印刷したものなので、図表などがきれいに仕上がっています。

ご関心のある方は、次をクリックしていただければ、ダウンロード画面に移動できます。

 

第1次世界大戦後ドイツのハイパー・インフレーション(1-1) -大規模な貨幣破産・財政破産の発生要因についての解明-

第1次世界大戦後ドイツのハイパー・インフレーション(1-2) -大規模な貨幣破産・財政破産の発生要因についての解明-

第1次世界大戦後ドイツのハイパー・インフレーション(1-3) -大規模な貨幣破産・財政破産の発生要因についての解明-

 

以上、お知らせです。

なお、この続編の論文「第1次世界大戦後ドイツのハイパー・インフレーション(2) -インフレーションがもたらした経済的・社会的な作用と結果の検証 ―」2023年8月、は次の三つの方法でダウンロードできます。

①日本のプレ・プリントサーバーのJxivにアクセスして経済・経営学分野を検索してダウンロード。

②次の国際識別子をクリックしてダウンロード。doi:https://doi.org/10.51094/jxiv.494

③ 本サイト「金融の公共性研究所サイト(http://finance-public.org)」の紀国セルフ・アーカイブ「公共性研究」ページ(Jxiv にリンク)からダウンロード。

よろしくお願い申し上げます。

紀国正典著「第1次世界大戦後ドイツのハイパー・インフレーション(1)―大規模な貨幣破産・財政破産の発生要因についての解明―」論文の構成と概容のお知らせ

このたび、紀国が執筆した「第1次世界大戦後ドイツのハイパー・インフレーション(1)―大規模な貨幣破産・財政破産の発生要因についての解明―」を、高知大学経済学会『高知論叢』第123号、2022年10月に投稿しましたが、高知大学経済学会の現運営委員長から「図表も文字数に含めろ」との強い指示で、三分割して公表せざるを得なくなりました。三分割だと発表完了が来年の10月となり、実に一年遅れとなってしまいます。これでは研究発表になりません。

このためこの機会に、本Webサイトに、紀国セルフ・アーカイブ「公共性研究」ページを開設し、そこで紀国執筆論文の事前公開をすることにしました。

ご関心のある方は、この「公共性研究」ページから、本論文のPDFファイルをダウンロードしていただくことができます。

ご意見のある方は、投稿ページ(意見交流)にてご意見を賜れば幸いです。

本論文の構成は次のとおりです。
はじめに

第1章 ハイパー・インフレーションの発生と展開
ハイパー・インフレーションの発生と展開過程

第2章 ハイパー・インフレーションの発生要因についての諸説の検討
ドイツ政府、ライヒスバンクなどとチュローニ氏の見解の相違
マルク紙券の発行を続けた財政金融政策が基本要因とのチュローニ氏の見解
チュローニ氏の見解と貨幣数量説(数量増加減価論)
チュローニ氏を批判しつつ基本は継承した吉野俊彦氏の見解
吉野俊彦氏の見解と貨幣数量説(数量増加減価論)
チュローニ氏と吉野俊彦氏の研究成果の継承と問題点
大内兵衛氏の調査研究をふまえての問題点の克服

第3章 ハイパー・インフレーションの発生要因についての紀国の見解

おわりに

注記

参考文献

付表(第2章の参考統計データ、第3章の参考統計データ)

このようなテーマをとりあげた意義と論文概容を、本論文の「はじめに」で、次のように述べております。

本論文は、第1次世界大戦後ドイツのハイパー・インフレーションの発生要因を考察したものである。

本論文の意義と課題は、次の五つである。
一つは、高度な公共財の崩壊の実際の状況を、人類の歴史的な経験をもとに明らかにすることである。
多くの人間が利用する貨幣と財政は、共同利用という側面からみてきわめて高度な公共財である。これを持続的に管理する共同制御がうまくいけば、それがもたらす共同利益は大きい。しかし、その持続的管理と制御の失敗である国家破産が発生すれば、それによる共同損失の範囲は広く、その規模も甚大なものとなる。このことを、現実に発生した第1次世界大戦後ドイツのハイパー・インフレーションという歴史的経験をもとに、検証してみたいのである。

二つめは、ハイパー・インフレーションは、特殊な要因で発生したのでなく、いつでもどこでも容易に発生するものであることを、第1次世界大戦ドイツのハイパー・インフレーションの歴史的経験と材料をもとに、明らかにしてみることである。

三つめに、第1次世界大戦後ドイツのハイパー・インフレーションを取り上げたのは、これに関して信頼できる正確なデータが残っているからである。こデータを利用することによって、より真実に近いところで、インフレーションの実状と発生要因を解明できるのである。
第1次世界大戦後のドイツでは、連合国賠償委員会の命令で統計の整備と公表が命じられていた。この措置によって信頼できる正確なデータが残されたのである。これまで歴史上何度もハイパー・インフレーションを発生させてきたロシアやハンガリーさらに途上国では、統計データの入手が困難であるうえ正確度で問題点も多い。しかし当時のドイツについては、上記の措置により、きわめて信頼度の高いデータを利用できるのである。
またこのような事情から、当時のドイツでは、口コミや伝聞情報だけでなく、正確な公表情報にもとづいて、裁定取引(不利な取引から有利な取引に資金を移す取引)が行われていたと推測できる。このことによって貨幣減価もかなり正確な数値情報にもとづいて発生していたであろうと考えられる。なお重要なデータは、本論文の末尾に付表として残しておくことにした。今後この問題を議論したり、研究を深めるための基礎データとして役立つであろうからである。

四つめに、ハイパー・インフレーションは、貨幣数量説論者がいうように、貨幣数量の増加が直接的に引き起こしたものでないことを明らかにすることである。

五つめは、アベノミクス国家破産がハイパー・インフレーションを招くであろうことを明らかにすることである。これについてはすでに、拙稿の紀国正典「アベノミクス国家破産(1)―貨幣破産・財政破産―」において実証と分析を試みたが、これをさらに歴史的な経験をふまえて確認してみたいのである。
ただし安部晋三氏は、選挙遊説中の2022年7月8日に、悪質宗教団体(世界平和統一家庭連合:旧統一教会)に深く関与していたことによる銃撃で亡くなった。これによって、アベノミクスの影響力は低減するかもしれない。しかし、アベノミクスを信奉し積極財政を主張する人たちの影響力はいまだに強大である。またアベノミクスの残した負の遺産は、容易に処理できないほど巨大なものであり、アベノミクス国家破産の恐れがなくなったわけではない。

以下、第1章の「ハイパー・インフレーションの発生と展開」では、第1次世界大戦後ドイツのハイパー・インフレーションの発生と展開過程を、財政金融関係のデータと政治・国際関係の出来事を簡潔に紹介することで、概観してみる。

第2章の「ハイパー・インフレーションの発生要因についての諸説の検討」においては、ドイツのハイパー・インフレーションについての3人の論者の研究成果を紹介しつつ検討する。C.B.チュローニ氏、吉野俊彦氏、大内兵衛氏の3人である。
チュローニ氏は、1931年にドイツ・インフレーションについての著書をイタリアで刊行し、これはその後1937年にM.E.Sayersによって英訳されたが、「ドイツ・インフレーションについての定本」との高い評価を得たのである。氏は当時、ミラノ大学・カイロ大学教授にあって、1920年から29年に至る間は連合国賠償委員会ベルリン駐在委員、ドイツ輸出統制局長官などの要職を歴任し、世界史上未曾有のハイパー・インフレーションの実際を現場でまじかに見聞できた学者である。
吉野俊彦氏は、大平洋戦争末期に日本銀行調査局に在籍していたとき、時の政府からドイツインフレーションについての調査依頼を受け、優れた調査結果を残していたのであった。
大内兵衛氏は、東京帝国大学経済学部助教授(財政学講座)にあったとき森戸助教授筆禍事件に連座して失職し、大原社会問題研究所の嘱託となったが、1921年2月にドイツに留学し、当時のドイツについて調査研究する機会に恵まれた。この成果が大原社会問題研究所の研究調査パンフレット第1号として残っていたのであった。
またこの章では、貨幣数量説(数量増加減価論)についても、批判的に考察する。

第3章の「ハイパー・インフレーションの発生要因についての紀国の見解」では、3人の論者の研究成果の検討をふまえ、筆者の見解を明らかにする。「おわりに」では、本論文のまとめをおこなうとともに、今後の研究課題を提起する。

以上です。
ご笑覧いただければ幸いです。

紀国正典著「アベノミクス国家破産―貨幣破産・財政破産―」(『高知論叢』第122号、2022年3月)ダウンロードのご案内

このたび、紀国が研究をすすめてきました「国家破産論」研究の第7作「アベノミクス国家破産(1)―貨幣破産・財政破産―」(高知大学経済学会『高知論叢』第122号、2022年3月)が、高知大学学術情報ディポジトリに掲載されましたので、ご案内申し上げます。

ご関心のある方は、次をクリックして高知大学学術情報ディポジトリにアクセスしていただき、拙稿論文をダウンロードしていただくことができます。
ご意見のある方は、投稿ページ(意見交流)にてご意見を賜れば幸いです。

「アベノミクス国家破産(1)―貨幣破産・財政破産―」

 

本論文の構成は次のとおりです。

はじめに

第1章 アベノミクス国家破産(金融・財政)の全体像

アベノミクス国家破産(金融・財政)の現状

アベノミクス国家破産(金融・財政)の基本構図

アベノミクス国家破産(金融・財政)の進展状況と時期区分

アベノミクス国家破産の解明方法:統合研究の必要性

第2章 財政と金融の相互関係と戦後日本の分離規制

歴史における財政と金融の相互関係

戦後日本の財政法と新日本銀行法による財政と金融の分離規制

(財政法と財政制度改革)

(新日本銀行法と中央銀行制度改革)

第3章 財政と金融の癒着合体における隠ぺい型の形成

財政法と財政制度における不備・不具合

新日本銀行法と中央銀行制度における不備・不具合

世界の中央銀行制度の評価方法にみる不備・不具合

貨幣数量説を利用した財政と金融の癒着合体(隠ぺい型)の成功

おわりに

 

「はじめに」において、次のように本論文の意義と意図を示しています。

「アベノミクス」という言葉は、政治家である安倍晋三氏の単なるキャッチフレーズ(宣伝文句)に過ぎない。しかも接尾語の「ミクス‘mix’」とは「調合した」という意味だから、「安倍が作りだした」ぐらいの意味でしかない。もしこれが主義や説を表すなら、「イズム‘ism’」にならなければならない。「アベノミクス」とは、このような軽い乗りの造語にしか過ぎなかったのである。
ところが、「アベノミクス」を掲げた第2次安倍政権は、実に7年8ヵ月も継続することになった。もっとも安倍三氏は、2020年8月28日、体調不良を名目の理由にして突然の辞意表明となった。「桜を見る会」の不祥事(スキャンダル)での検察の捜査を恐れてでの事だというのが大方の見方である。彼の尊敬する祖父で首相を務めた岸信介氏は、いつも刑務所の塀の上を歩いているが、落ちるときはいつも塀の外に落ちたと評されていたが、やはりその血を受けついでいるのだろうか。
だが「アベノミクス」は、それを継承するとして発足した菅政権もふくめると、9年間近くも継続したことになる。2021年発足の岸田政権のもとでも、安部晋三氏は自民党最大派閥を結成し影響力を拡大しているので、隠れ「アベノミクス」として、現在も継続中なのである。
この現象は、日本における財政史、金融史、財政金融史そして政治・経済史上、異常で異様な出来事なのである。戦時でもないこの平時において、財政金融において戦時下のようなひどい状況が出現したのである。言論統制され、軍国主義の戦時下ならそれもありようが、言論が自由な今でも、この状況がいとも簡単に出現し、9年間も継続したのである。
この不思議な現象の謎を解くこと、つまり「アベノミクス」を検証することは、財政学、金融論そして財政金融論さらに経済学だけでなく、政治学から法学そしてマスメディア論や社会心理学なども必要とする。
アベノミクス国家破産とは、「アベノミクス」というキャッチフレーズによって、国家破産つまり国家的規模での破産が引き起こされる現象のことを表したものである。これは、次の三つの分野で発生する。①金融・財政分野における国家破産である貨幣破産・財政破産、②エネルギー分野における国家破産であるエネルギー破産、③気候変動分野における国家破産である気候変動対応破産である。②と③は、安倍政権が8年間も無為無策で放置したため、早く手を打つべき重要な時期を逃してしまったことによって生じる。
金融・財政、エネルギー、地球環境というのは、いずれもきわめて高度な公共財である。これが崩壊するのであるから、これから発生するであろうと予測される被害や損害は広範囲にわたり、甚大なものになる。日本は今後、たいへんな苦境に見舞われることになり、安倍三という政治家が、取り返しのつかない大罪を犯したということが、ますます明らかになるであろう。
本論文は、このようなアベノミクス国家破産のうち、金融・財政の側面について、次のような課題を設定し、これらを解明してみようとするものである。
アベノミクス国家破産(金融・財政)はどのような国家破産になると想定できるか、どのような段階をふんでどのように進展するものなのか、そしてそれはいつどのようにして発生するものなのか、なぜこのような深刻な事態を招いてしまったのか。
これらを解明することで、実際の国家破産の発生を少しでも抑止、防止できるための政策課題と研究課題を得られれば幸いであると考えている。
第1章においては、アベノミクス国家破産(金融・財政)の全体像を確認し、現段階がどこにあるのかをみてみたい。またアベノミクス国家破産の解明方法にも言及する。第2章では、財政と金融の相互関係と戦後日本における分離規制の状況をあきらかにする。第3章では、このアベノミクス国家破産を引き起こすことになった財政と金融の癒着合体について検討を深め、この隠ぺい型を形成した制度要因について解明を深める。
なお本論文も、筆者がこれまですすめてきた国家破産論研究の続編である。

以上です。
ご笑覧いただければ幸いです。

紀国正典著「貨幣数量説と貨幣減価の謎(2・完)―アダム・スミスの残した課題―」ダウンロードのご案内

このたび、紀国が研究をすすめてきました「国家破産・金融破産」研究の第 6作「貨幣数量説と貨幣減価の謎(2・完)―アダム・スミスの残した課題―」(高知大学経済学会『高知論叢』第121号、2021年10月)が、高知大学学術情報ディポジトリに掲載されましたので、ご案内申し上げます。

ご関心のある方は、次をクリックして高知大学学術情報ディポジトリにアクセスしていただき、拙稿論文をダウンロードしていただくことができます。
ご意見のある方は、投稿ページ(意見交流)にてご意見を賜れば幸いです。

貨幣数量説と貨幣減価の謎(2・完)―アダム・スミスの残した課題―

本論文の構成は次のとおりです。

第2章 地金論争とアダム・スミス

地金委員会と地金論争(第1次貨幣数量説論争)
『地金委員会報告』とアダム・スミス
ディビッド・リカードの貨幣数量説とアダム・スミス
ディビッド・リカードの貨幣・金融制度改革論
ピール銀行条例と通貨主義・銀行主義論争 (第2次貨幣数量説論争)

第3章 さまよう貨幣数量説
おわりに

 

(以下の目次は、前号掲載分です。)
はじめに
第1章 貨幣数量説とアダム・スミス
アダム・スミスが提起したといわれている問題
『法学講義ノート』とヒュームの貨幣数量説
『国富論』における貨幣数量説批判(1)生産費低下
『国富論』における貨幣数量説批判(2)貴金属分量の減少
『国富論』における貨幣数量説批判(3)貨幣還流と貨幣不信
アダム・スミスの貨幣数量説批判(まとめ)
ジェイムズ・ステュアートの貨幣数量説批判

 

本論文において貨幣数量説批判をとりあげた意義について、本論文の「はじめに」において、次のように述べています。

「現代になっても、この世の中をさまよっている亡霊のような貨幣・金融理論が存在する。それは、貨幣数量説である。

亡霊といったのは、この貨幣数量説を、経済学の創始者である二人の知の巨人、ジェイムズ・ステュアートとアダム・スミスが、それぞれ『経済の原理』と『国富論』において、きっぱりと明快に批判し、学説史から退けていたからである。いわば死んだも同然の金融理論だったのである。ところが不思議なことに、この金融理論を、古典学派の経済学の完成者と評価されるリカードが、あの世からよみがえらせたのである。一度死んだはずなのに、またぞろ復活するのは、まさに亡霊だろう。
さらに貨幣数量説は、アメリカにおいて、数量経済学者であるエール大学のアービング・フイッシャーによって、さらにシカゴ大学のミルトン・フリードマンなどのマネタリスト(貨幣主義学派)によって、また命をふきこまれたのである。

貨幣数量説を亡霊といったのには、もう一つ理由がある。亡霊のように希薄で根拠に乏しいからである。だから変幻自在・応用自在でなんにでもとり憑くのである。
日本では「アベノミクス」というおおげさな衣を身にまとって政権中枢に入り込み、「リフレ派」などとの気取った化粧をほどこして金融中枢のもぐり込んだ。リーマンショック後の世界では、ヘリコプターから金をまくように量的金融緩和すれば、万事うまくいくという奇っ怪な「ヘリコプターマネー論」が、すでに日本で失敗済みなのに、世界に出没するようになった。そして今では、財政も金融も経済もそして家計も危機的に悪化しているのに、株価だけが異様に高騰するという怪奇現象をひきおこしている。

本論文は、このような不思議な現象を解明してみようとするものである。いわば亡霊の正体をみてみたいのである。

以下、次の順序で、考察をすすめる。
第1章の「貨幣数量説とアダム・スミス」では、スミスとステュアートが、貨幣数量説をどのように克服してきたのかについて、明らかにする。第2章の「地金論争とアダム・スミス」では、一度死んでしまったはずの貨幣数量説が、なぜ、どのようにして、リカードによって復活したのかを解明する。驚くことに、貨幣数量説は、スミスを旗印にかかげて、蘇生したのである。第3章の「さまよう貨幣数量説」では、それ以降の現代に至るまでの貨幣数量説の変遷を概観してみることにする。最後に「おわりに」で、これらをまとめるとともに、残された課題について整理してみる。」

以上です。
ご笑覧いただければ幸いです。

紀国正典著「貨幣数量説と貨幣減価の謎(1)―アダム・スミスの残した課題―」ダウンロードのご案内

このたび、紀国が研究をすすめてきました「国家破産」研究の第6作「貨幣数量説と貨幣減価の謎(1)―アダム・スミスの残した課題―」(高知大学経済学会『高知論叢』第120号、2021年3月)が、高知大学学術情報ディポジトリに掲載されましたので、ご案内申し上げます。

ご関心のある方は、次をクリックして高知大学学術情報ディポジトリにアクセスしていただき、拙稿論文をダウンロードしていただくことができます。
ご意見のある方は、投稿ページ(意見交流)にてご意見を賜れば幸いです。

貨幣数量説と貨幣減価の謎(1)―アダム・スミスの残した課題―

本論文の構成は次のとおりです。

はじめに
第1章 貨幣数量説とアダム・スミス
アダム・スミスが提起したといわれている問題
『法学講義ノート』とヒュームの貨幣数量説
『国富論』における貨幣数量説批判(1)生産費低下
『国富論』における貨幣数量説批判(2)貴金属分量の減少
『国富論』における貨幣数量説批判(3)貨幣還流と貨幣不信
アダム・スミスの貨幣数量説批判(まとめ)
ジェイムズ・ステュアートの貨幣数量説批判

(以下、次号掲載です。)
第2章 地金論争とアダム・スミス
地金委員会と地金論争(第1次貨幣数量説論争)
『地金委員会報告』とアダム・スミス
ディビッド・リカードの貨幣数量説とアダム・スミス
ディビッド・リカードの貨幣・金融制度改革論
ピール銀行条例と通貨主義・銀行主義論争 (第2次貨幣数量説論争)

第3章 さまよう貨幣数量説
おわりに

本論文において貨幣数量説批判をとりあげた意義について、本論文の「はじめに」において、次のように述べています。

「現代になっても、この世の中をさまよっている亡霊のような貨幣・金融理論が存在する。それは、貨幣数量説である。

亡霊といったのは、この貨幣数量説を、経済学の創始者である二人の知の巨人、ジェイムズ・ステュアートとアダム・スミスが、それぞれ『経済の原理』と『国富論』において、きっぱりと明快に批判し、学説史から退けていたからである。いわば死んだも同然の金融理論だったのである。ところが不思議なことに、この金融理論を、古典学派の経済学の完成者と評価されるリカードが、あの世からよみがえらせたのである。一度死んだはずなのに、またぞろ復活するのは、まさに亡霊だろう。
さらに貨幣数量説は、アメリカにおいて、数量経済学者であるエール大学のアービング・フイッシャーによって、さらにシカゴ大学のミルトン・フリードマンなどのマネタリスト(貨幣主義学派)によって、また命をふきこまれたのである。

貨幣数量説を亡霊といったのには、もう一つ理由がある。亡霊のように希薄で根拠に乏しいからである。だから変幻自在・応用自在でなんにでもとり憑くのである。
日本では「アベノミクス」というおおげさな衣を身にまとって政権中枢に入り込み、「リフレ派」などとの気取った化粧をほどこして金融中枢のもぐり込んだ。リーマンショック後の世界では、ヘリコプターから金をまくように量的金融緩和すれば、万事うまくいくという奇っ怪な「ヘリコプターマネー論」が、すでに日本で失敗済みなのに、世界に出没するようになった。そして今では、財政も金融も経済もそして家計も危機的に悪化しているのに、株価だけが異様に高騰するという怪奇現象をひきおこしている。

本論文は、このような不思議な現象を解明してみようとするものである。いわば亡霊の正体をみてみたいのである。

以下、次の順序で、考察をすすめる。
第1章の「貨幣数量説とアダム・スミス」では、スミスとステュアートが、貨幣数量説をどのように克服してきたのかについて、明らかにする。第2章の「地金論争とアダム・スミス」では、一度死んでしまったはずの貨幣数量説が、なぜ、どのようにして、リカードによって復活したのかを解明する。驚くことに、貨幣数量説は、スミスを旗印にかかげて、蘇生したのである。第3章の「さまよう貨幣数量説」では、それ以降の現代に至るまでの貨幣数量説の変遷を概観してみることにする。最後に「おわりに」で、これらをまとめるとともに、残された課題について整理してみる。」

以上です。
ご笑覧いただければ幸いです。

紀国正典著「アダム・スミスの国家破産論―国家破産なき学問体系と学問方法の解明―」ダウンロードのご案内

このたび、紀国が研究をすすめてきました「国家破産・金融破産」研究の第5作「アダム・スミスの国家破産論―国家破産なき学問体系と学問方法の解明―」(高知大学経済学会『高知論叢』第119号、2020年10月)が、高知大学学術情報ディポジトリに掲載されましたので、ご案内申し上げます。

ご関心のある方は、次をクリックして高知大学学術情報ディポジトリにアクセスしていただき、拙稿論文をダウンロードしていただくことができます。
ご意見のある方は、投稿ページ(意見交流)にてご意見を賜れば幸いです。

アダム・スミスの国家破産論―国家破産なき学問体系と学問方法の解明―

本論文の構成は次のとおりです。

はじめに
第1章 アダム・スミスの研究足跡と時代背景
アダム・スミスの生涯と研究足跡
アダム・スミスの生きた時代

第2章 アダム・スミスの学問体系と学問方法
アダム・スミスの研究足跡と学問体系
経験主義アプローチ
ニュートン主義アプローチ

第3章 グラスゴウ大学『法学講義ノート』にみる国家破産論

第4章 『国富論』にみる国家破産論

第5章 国家破産なき学問体系―アダム・スミスの残した課題
スミスの国家破産なき学問体系
経験主義アプローチによる解明
ニュートン主義アプローチによる解明

おわりに

 

「アダム・スミスの国家破産論」をとりあげた意義について、本論文の「はじめに」において、次のように語っております。

「本論文では、アダム・スミスの国家破産論を考察する。(以下スミスと略記する)
スミスの国家破産論を取りあげる意義について、わたしは次のように三つを考えている。

一つは、スミスがジェイムズ・ステュアートと共に経済学を近代科学として確立し、「経済学の父」と賞賛されていることは多くの人の知るところであり、そのスミスが国家破産というテーマをどのように取りあげているのかを論じること自体に、意義はある。
ただしそれだけでなく、スミスの経済学は現代では、新古典派経済学や市場原理主義経済学などの、国家破産を防止できないだけでなく、気候変動破産を促進する役割をしている経済学を勢いづかせる役割をもっているので、それを抑止するためにもスミスの国家破産論を検討しなければならないのである。

二つめは、スミスの国家破産論を、「国家破産なき学問体系・学問方法」として考察することである。これまでの学説は、もっぱら重商主義批判としてのスミスの国家破産論だけに目を当ててきたが、重商主義批判の土台を形成した彼の学問体系は、「見えない手」に導かれた「自然的自由の体系」であり、国家破産は起こり得ないのである。
そうだとすると、スミスには、「国家破産ありの学問体系」と「国家破産なきの学問体系」が並存していることになる。スミスの国家破産論を解明するには、この両側面に目を配り、その学問体系と学問方法にまでさかのぼって検討しなければならないのである。本論文の副題に、「国家破産なき学問体系と学問方法の解明」としたのは、この両側面について考察するという趣旨である。

三つめは、これまでのスミスの国家破産論のほとんどが、スミスの「公債論」、つまり「財政破産論」として研究されてきた。しかし、国家破産は、財政破産に限らない。破産を、「人間が持続的な管理・運営に失敗し、思考と行動の一大変革を強制されること」と定義してみると、破産は、個人破産から企業破産、銀行破産、自治体破産、地域破産、政府破産そして国際破産へと規模が拡大し、さらにその要因から分類してみても財政破産、貨幣破産、金融破産、経済破産、気候変動破産、災害破産、戦争破産へと広がる。2)

わたしが本論文で、スミスの国家破産論という場合にも、そのような広い意味で使っている。このような多様な意味での国家破産という視点から、スミスの国家破産論を検討するつもりである。

以下、次の順序で検討をすすめる。
第1章「アダム・スミスの研究足跡と時代背景」と第2章「 アダム・スミスの学問体系と学問方法」においては、スミスの生涯と研究足跡を追いながら、スミスの学問体系と学問方法を検討してみる。
第3章「グラスゴウ大学『法学講義ノート』にみる国家破産論」と第4章「『国富論』にみる国家破産論」では、重商主義が国家破産を引き起こしたのだというスミスの重商主義批判としての国家破産論(重商主義国家破産論)およびスミスの提案する重商主義国家破産からの再生案について検討してみる。
第5章「国家破産なき学問体系―アダム・スミスの残した課題」においては、国家破産なきスミスの学問体系について検討し、なぜそのように至ったのかについて、スミスがその学問方法を確立した初期の研究成果の『天文学史』を深く検討して、解明を試みる。
最後に、「おわりに」において、これらの検討結果をまとめてみる。」

 

以上です。

ご笑覧いただければ幸いです。

紀国正典著「気候変動破産―人類を救えるか:TCFD最終報告書―」ダウンロードのご案内

このたび、紀国が研究をすすめてきました「国家破産・金融破産」研究の第4作「気候変動破産―人類を救えるか:TCFD最終報告書―」(高知大学経済学会『高知論叢』第118号、2020年3月)が、高知大学学術情報ディポジトリに掲載されましたので、ご案内申し上げます。

ご関心のある方は、次をクリックして高知大学学術情報ディポジトリにアクセスしていただき、拙稿論文をダウンロードしていただくことができます。
ご意見のある方は、投稿ページ(意見交流)にてご意見を賜れば幸いです。

気候変動破産―人類を救えるか:TCFD最終報告書―

本論文の構成は次のとおりです。

はじめに
第1章 破産の定義・分類と気候変動破産
破産の定義
破産の分類と気候変動破産

第2章 気候変動破産とその特性
気候変動破産の特性

第3章 自然環境変動破産とIPCC報告書
IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)
IPCC第5次評価報告書(2013年から2014年)
IPCC特別報告書(2018年、2019年)

第4章 社会環境変動破産とTCFD最終報告書
気候関連財務ディスクロージャー・タスクフォース(TCFD)
TCFD最終報告書が求める情報開示手続き
TCFDが必須条件として要求する五つの改革作業
TCFDの情報開示手続きが求める作業手順
なぜ金融部門に対して特別仕様の情報開示か
なぜ非金融部門(4グループ)に対して特別仕様の情報開示か
TCFD最終報告書の意義と課題

おわりに

「気候変動破産」をとりあげた意義について、本論文の「はじめに」において、次のように語っております。

「本論文は、地球温暖化やそれによる気候変動現象を、「人間の破産行為」として位置づけ、その考察を試みた研究成果である。
地球温暖化やそれが引きおこす気候変動現象は、人間が地球環境の持続的な管理・運営に失敗したことによる結果であるので、明らかにそれは「人間による人間の破産行為」である。しかもその規模と範囲からみても、国家破産であり、国際破産なのである。したがって、これらの現象を「気候変動破産」とよばなければならない。
気候変動破産をとりあげる意義として、次の四つをあげることができる。
第1に、気候変動破産が、人類にとって未知で未経験の国家破産・金融破産そして国際破産だからである。
第2に、気候変動破産が、人類史上で最大規模であり、しかも最も長期にわたる国家破産・金融破産そして国際破産となるからである。
第3に、気候変動破産が、その終局の結末として、人類もふくめ地球上の生物すべてを消滅させる人類破産を生み出すかもしれないからである。
第4に、気候変動破産が、共同利用という側面からみて最高度の公共財である地球環境の崩壊現象だからである。
以下、次の順序で考察してみる。
第1章の「破産の定義・分類と気候変動破産」では、人間の破産行為を定義・分類し、そのなかにおける気候変動破産の位置づけについて検討してみる。第2章の「気候変動破産とその特性」では、他の国家破産と比較することによって、気候変動破産の特性について検討してみる。第3章の「自然環境変動破産とIPCC報告書」では、人類が自然環境変動破産をどのように理解し、どのように対応しようとしてきたのかについて、 IPCCの報告書の検討から探ってみる。第4章の「社会環境変動破産とTCFD最終報告書」では、人類は社会環境変動破産をどのように理解し、どのように対応しようとしてきたのかについて、TCFDの最終報告書の検討から探ってみる。
本論文では、とりわけ第4章に多くを割かざるを得なかった。TCFD最終報告書の意図と真意がしっかりと理解されていなく、またそれを作為的にゆがめる政治の動きもあったからである。それゆえ本論文の副題に、「人類を救えるか:TCFD最終報告書」をつけ、そのことを明示した。なお枚数制限があるため、これ以外の論述については簡略にせざるを得なく、気候変動破産という視点からスケッチ(素描)した範囲にとどめた。今後の課題に残しておきたい。」

以上です。
ご笑覧いただければ幸いです。

紀国正典著「国家破産・金融破産および国際破産の歴史」ダウンロードのご案内

このたび、論説「国家破産・金融破産および国際破産の歴史」を、高知大学経済学会『高知論叢』第117号(2019年10月)に発表しました。

紀国が研究をすすめてきました「国家破産・金融破産」研究の第3作となるものです。

ご関心のある方は、次をクリックして高知大学学術情報ディポジトリにアクセスしていただき、拙稿論文をダウンロードしていただくことができます。

国家破産・金融破産および国際破産の歴史

論文の構成は次のとおりです。
「国家破産・金融破産および国際破産の歴史」

はじめに
第1章 国家破産・金融破産および国際破産の定義と分類
第2章 八つの金融危機と国家破産・金融破産および国際破産
第3章 財政破産の歴史
第4章 貨幣破産の歴史
第5章 金融破産の歴史
第6章 国際破産の歴史
おわりに

本論文の意義について、「はじめに」において、次のように語っております。
「本論文では、国家破産・金融破産および国際破産についての、歴史実証研究の画期的な成果をとりあげる。
それは、カーメン・M・ラインハート&ケネス・S・ロゴフ著『今回はちがう:金融愚行の800年』‘Carmen M. Reinhart & Kenneth S. Rogoff, This Time is Different : Eight Centuries of Financial Folly ,Princeton University Press, 2009’ (邦訳:村井章子訳『国家は破綻する―金融危機の800年』日経BP社、2011年)である。以下、ラインハート&ロゴフと略す。
わたしが、ラインハート&ロゴフの研究成果を取りあげたのは、次の三つの理由からである。
一つは、原本の表題は「金融愚行の800年」であり、邦訳の表題は「金融危機の800年」であるが、そこに描かれているのは、まさに国家破産・金融破産そのものだからである。
著者たちの研究は、国家破産・金融破産のすべての発生様式とそれらの連動作用関係を網羅しており、国家破産・金融破産についての総合研究なのである。
二つめが、1300年から2008年までの800年もの長きにわたり、66ヵ国もの国を対象にして調査した実証研究であり、国家破産・金融破産の人類史を明らかにした研究成果だからである。
66カ国の内訳は、アフリカ13カ国、アジア12カ国、ヨーロッパ19カ国、中南米18カ国そして北米と太平州2カ国である。このすべてで世界のGDPの約90%をしめるという。彼らはこれらの多数の国の歴史データを徹底して収集したのである。
三つめは、著者たちが歴史実証研究から導きだした教訓というのが、意義深い言葉だったからである。
それは、原本の表題となっている「今回はちがう‘This time is different.’」シンドローム(病的傾向)である。人間が、「今回はちがう」と称しながら、結局は、「同じ過ち」をくり返してきたと、著者たちは教訓を引き出したのである。この教訓は学ぶべきものであるが、他方でこれは歴史における社会発展の矛盾を指摘しており、それも検討しなければならないのである。
著者たちは膨大なデータを収集し、そのデータセットをインターネット上でも公開している。かれらの著書は、このような豊富なデータを利用し、それらを分析した多数の図や表を用いて、新しい知見を明らかにしたものである。ただしその分析結果は多岐にのぼり、共著のためかいろんな説明が錯綜しており、しかも高度に専門的な内容もあるので、要点を理解しづらいところが多い。
本論文では、筆者の責任で、彼らの研究成果をよりわかりやすく、簡潔に要約して示すことにする。この貴重な研究成果をよりわかりやすく紹介し、多くの人に知ってもらい、国家破産・金融破産について関心を高めてもらいたいからである。なおもっと詳しく知りたい方には、直接に邦訳書や原本に当たっていただきたい。
以下、最初に、第1章「国家破産・金融破産および国際破産の定義と分類」において、国家破産・金融破産および国際破産についての、紀国の考える定義と分類を明らかにする。そしてそれをふまえて、ラインハート&ロゴフの研究成果を紹介していく。
まずは、第2章「八つの金融危機と国家破産・金融破産および国際破産」において、著者たちのいう八つの金融危機を紹介し、その内容を検討する。これ以降、第3章「財政破産の歴史」、第4章「貨幣破産の歴史」、第5章「金融破産の歴史」、第6章「国際破産の歴史」という順序で、かれらの研究成果を要約して紹介する。
最後に、第7章「歴史実証研究からの忠告」で、著者たちが歴史実証研究からたどり着いた教訓と忠告について考えてみる。」

以上です。
ご笑覧いただければ幸いです。

紀国正典著「ジェイムズ・ステュアートーの国家破産・金融破産論」ダウンロードのご案内

このたび、紀国が研究をすすめてきました「国家破産・金融破産」研究の第2作「ジェイムズ・ステュアートの国家破産・金融破産論」(高知大学経済学会『高知論叢』第116号、2019年3月)が、高知大学学術情報ディポジトリに掲載されましたので、ご案内申し上げます。

ご関心のある方は、次をクリックして高知大学学術情報ディポジトリにアクセスしていただき、拙稿論文をダウンロードしていただくことができます。
ご意見のある方は、投稿ページ(意見交流)にてご意見を賜れば幸いです。

ジェイムズ・ステュアートの国家破産・金融破産論

論文の構成は次のとおりです。
「ジェイムズ・ステュアートの国家破産・金融破産論」

はじめに

第1章 ステュアート経済学の優位性

第1節 ステュアート経済学の優れた功績と悲運
第2節    ステュアート経済学の基礎をなす「貨幣流通の原理」と「調整均衡の原          理」
第3節 ステュアートによる先見的な貨幣数量説批判

第2章 ステュアート公信用論の優位性

第1節 ステュアート公信用論についての通説の誤った理解
第2節 通説が誤ってしまった謎の解明
第3節 ステュアートの考える信用と「信頼の原理」
第4節 ステュアートの考える公信用

第3章 ステュアートによる公信用研究の方法

第1節 ステュアートの公信用研究の方法と五つの想定
第2節 公信用の実証研究からステュアートが得た教訓
第3節 公信用の理論研究
第4節 公債に寛容なステュアート

おわりに

ジェイムズ・ステュアートを取りあげた意義について、本論文の「はじめに」では、次のように語っております。

「本論文では、アダム・スミスの『国富論』より9年早く、歴史上最初に、経済学を科学として体系的に確立したと評されるサー・ジェイムズ・ステュアート(Sir James Steuart、1713年―80年)の、国家破産・金融破産論を考察する(以下、ステュアートと略記する)。

ステュアートの国家破産・金融破産論を考察する意義として、次の三つをあげることができる。

第1に、科学として体系的に確立した経済学のなかに、国家破産・金融破産というテーマを重要な研究課題として位置づけたのが、ステュアートだったからである。
17世紀から18世紀のヨーロッパは、宗教紛争と覇権争いそして植民地争奪のための戦争に明け暮れた時代であった。戦争は、ヨーロッパの列強各国の財政を膨張させ、深刻な財政危機を引きおこした。財政赤字は莫大な公債の累積をもたらし、文明と国家の危機と表現される事態を発生させた。この状況にあって、当時の知識人、ディヴィッド・ヒューム、モンテスキュー、ジェイムズ・ステュアート、アダム・スミスなどは、それぞれの視点から、国家破産・金融破産というテーマと向き合わざるを得なかった。そのなかにあって、このテーマを経済学の信用論の展開のなかに位置づけて考察したのが、ステュアートだったのである。

第2に、ステュアートの国家破産・金融破産論の理解において、通説に重大な誤解があるからである。その通説とは、「自国民に対する公債なら、それがどれほど累積しようと、政府が破産することはない」とステュアートが考えていた、という説である。
この説は、経済学史から国家破産論そして財政学分野にまで広く行き渡っており、通説としての大きな影響力をもつまでになっている。しかし信じられないことだが、この説はステュアートの読み間違いであり、曲解といっていいほどの誤読なのである。
この誤解を解き、ステュアートの名誉回復を図らねばならない。そうでないと、ステュアートが学問的良心から真剣に考えた研究成果が見捨てられ、公信用論や国家破産論の研究の損失になってしまうのである。
そしてこの通説は、ステュアート経済学を重商主義・原始蓄積期の理論だとみなす通説とも無関係ではないので、それも批判的に検討しなければならない。

第3に、ステュアートの国家破産・金融破産論が、現代的意義をもっているからである。
現代そしてこれからの時代は、国家破産・金融破産そしてそれらと連動した経済破産のリスクがいっそう高まる状況にある。その原因は、経済自由主義の引き起こした三つの巨大な負の遺産、金融バブルの崩壊、経済格差と貧困の拡大、地球温暖化危機である。
ディヴィッド・ヒュームは文明を破壊するから、アダム・スミスは不生産的との理由から、公債全面反対論を唱えた。それは健全な思想であり順守されるべきものであるが、現代は、それだけでは対処できない事態を迎えている(以下、ヒューム、スミスと略記する)。
それに比べると、ステュアートの公信用論・国家破産論は、より現実的で実際的な接近方法を示しており、その研究成果から学ぶべきことは多いのである。

以下、次の順序で考察する。
第1章「ステュアート経済学の優位性」では、ステュアート経済学を重商主義・原始蓄積期の理論だとする通説を批判的に検討し、ステュアート経済学についてのわたしの理解を明らかにしたい。
第2章「ステュアート公信用論の優位性」と第3章「ステュアートによる公信用研究の方法」では、ステュアート公信用論についての通説の誤りを明らかにしたうえで、彼の公信用論の優れた内容と意義を明らかにするつもりである。」

以上です。
ご笑覧いただければ幸いです。

次の論文「国家破産・金融破産および国際破産の歴史」も校了となりましたので、高知大学学術情報ディポジトリに掲載されることになりましたら、ご案内させていただきます。
よろしくお願い申し上げます。

紀国正典著「ジョン・ローの国家破産・金融破産論」ダウンロードのご案内

このたび、紀国が研究をすすめてきました「国家破産・金融破産」研究の第1作「ジョン・ローの国家破産・金融破産論」(高知大学経済学会『高知論叢』第115号、2018年10月)が、高知大学学術情報ディポジトリに掲載されましたので、ご案内申し上げます。

ご関心のある方は、次をクリックして高知大学学術情報ディポジトリにアクセスしていただき、拙稿論文をダウンロードしていただくことができます。
ご意見のある方は、投稿ページ(意見交流)にてご意見を賜れば幸いです。

ジョン・ローの国家破産・金融破産論

論文の構成は次のとおりです。
「ジョン・ローの国家破産・金融破産論」
はじめに―国家破産・金融破産論の意義と定義
第1章 ジョン・ローの思想と行動
第2章 絶対王政下のフランスにおける財政危機と国家破産
第3章  ルイ14世末期の国家破産とジョン・ロー
第4章  ジョン・ロー・システムの展開と崩壊
第5章  ジョン・ロー・システムに対する評価
おわりに―ジョン・ロー・システムの歴史的実験が教えたこと

ジョン・ローを取りあげたのは、彼が歴史上初めて国家破産・金融破産を引きおこしたこともありますが、ヘリコプターマネー論者がこのローをヘリマネ論の歴史的実験として前向きに評価する動きがありましたので、その非科学性を批判するためです。
さらに、財政破産がいかに理不尽な金融破産をもたらすのかを明らかにして、警鐘を鳴らすことも意図しました。
ご笑覧いただければ幸いです。

次の論文「ジェイムズ・ステュアートの国家破産・金融破産論」も校了となりましたので、高知大学学術情報ディポジトリに掲載されることになりましたら、ご案内させていただきます。
よろしくお願い申し上げます。