就活七つの心得

就活七つの心得―本命企業から内定を得るために―

人手不足から学生さんの就職内定率が高まっています。とても喜ばしいことです。わたしが大学に勤務していた間には、就職の超々氷河期もあり、学生さんたちが苦しんでいるのを間近にみては、胸を痛めたことがありました。

しかし内定率が高まったとはいえ、第1希望の会社や本命企業の内定を得るためには、それなりの努力が必要です。漫然と構えているだけで、自動的に希望が満たせるわけではありません。

わたしは大学教員時代に、学生さんの就活指導にとりわけ熱心に取り組んできました。大学の使命は、卒業論文を書かせて終わりではなく、社会人として順調に巣立ちできるお手伝いをすることだ、と考えてきたからです。

ゼミでも上級生との就活懇談会を催したり、ゼミ生たちが就活経験と就活情報を共有できるインターネット掲示板(ゼミ生たちが「就活道場」と命名)を立ち上げたりしてきました。その掲示板には、学生さんたちの苦心や苦労そして生々しい経験や情報がたくさん寄せられました。就活の生きた情報ストックが積み重ねられたのです。わたしもこの掲示板から多くのことを学び、就活指導に活かしてきました。

そこで、これらの就活指導の経験を基に、第1希望の本命企業から内定を得られるための方策を七つにまとめてみました。題して、「就活七つの心得」です。

企業・会社選択は人生と生活の多くを決める一大事です。就活を甘くみていて、努力しないでいたため、なかなか内定をとれず、結局は、契約社員(非正規労働者)としてしか職を得られなかった学生さんもみています。この就活心得が少しでも学生さんのお役に立てることができれば、とてもうれしく思います。

(1)大学の勉学に専念し、たくさんの友人をつくるべし

学生さんのなかには、企業はあまり学業成績を重視しないと考えている人が多いようです。アルバイトなどの社会経験・職業体験を重んじていると思っている様子があります。ゼミ学生に企業に出すエントリーシートの自己PRを書かせてみると、必ず、アルバイト経験を書いてくるのです。

しかしこれは明らかに間違っています。
企業は、専門的な知識と豊かな教養それに裏付けされたコミュニケーション能力を求めているのです。
このことを証明する二つの事実を示しましょう。

一つは採用担当者の話から得たものです。
内定を得たゼミ生が、その内定先の採用担当者との懇談で、次のようなことを耳打ちされたことを、わたしはそのゼミ生から聞きました。
「ここだけの話、うちでは自己PRにアルバイト経験を書いてくる学生はすべて落としている。アルバイトにかまけて大学の学業をおろそかにしているからだ。」
内定学生相手なので、採用担当者も気を緩め、おもわず企業秘密をばらしてしまったのでしょうか。

もう一つは、調査データからです。
このデータの紹介記事を、2009年7月20日の日本経済新聞記事「就職に有利な学生は…対人関係・勉学意識高く」でみつけました。
それは、電通育英会と京都大学が、2007年秋に、全国の大学3年生約1000年を対象に学生生活調査を実施し、2008年秋に就職活動の結果を聞く追跡調査を行い、約600名の学生から回答を得たというものです。

このデータ分析から次のような興味深い傾向が明らかになりました。
第1希望の本命企業からうまく内定をとる学生は、大学の勉強にかなり熱心であり、携帯電話の登録人数が多ければ、日頃頻繁にメールをする人数も多く、親しい異性の友人がいる割合も高い、という特徴があるというのです。
反対に、第1希望の本命企業から内定をとれなかった学生は、大学の授業に
関する勉強時間が短く、基礎的な学力やスキルが身についたと感じていなく、大学で学ぶ理由を「なんとなく」と回答しており、学業と無関係なアルバイトの時間が多い、との特徴があったというのです。

わたしもゼミ生の様子をみていて、このことを実感しました。
ゼミ学習に熱心にとり組み、仲間たちとの議論に活発にかかわっていた学生さんは、多くの内定を得ていたのです。中には、二つもの優良地方銀行から内定をもらい、なんとかうちに来てくれと懇願する採用担当者を袖にする学生さんもいました。反対にあまり仲間との話し合いに参加せず、学習に消極的であった学生さんの内定実績はよくありませんでした。

企業は、コミュニケーション能力も求めるといいましたが、それを高めるためには、その土台となる専門知識と教養を身につけること、そして自分の意見を話し他人のいうことを聴く機会をふやすことです。コミュニケーション能力も大学での講義やゼミの授業に熱心に取り組むことで、身につけることができるのです。

断っておきますが、わたしはアルバイトをするな、といっているのではありません。公教育に対する公的資金の投入が先進国では異例なほど低い日本では、毎年のように大学授業料が上がり、反対に親の年収は下がり続けています。このため学生の生活困難はますます強まっており、アルバイトに頼らないと学業を続けられない状況にあります。
しかしそうした困難な状況にあっても、勉学を最初からあきらめるのではなく、時間の効果的なやりくりや効率的な学習方法を工夫して、取り組んでもらいたいと切に願っているのです。

(2)会社研究・業界研究を怠るな

会社は、その会社で働きたいという熱意のある学生さんを求めます。当たり前のことです。どこでも構わないという学生さんでは、そもそも自分のところで働く意欲がないのではないかと疑いますからね。
その熱意や意欲をどのように、どこで会社は判断するのでしょうか。
やはり、自分の会社のことや業界のことをよく知っていて、学習していることで判断するのだと思います。
そうだとすれば自分が働きたい会社や業界のことを、しっかりと調べ、学んでおかなければなりません。それが会社研究・業界研究です。わたしの就活指導の経験では、学生さんは意外にもこのことを分かっていなくて、会社のホームページを少しのぞいただけで済ませたりしている人もいました。

学生さんが会社研究・業界研究に消極的になるのは、そもそも将来自分が働きたい方向が定まっていないことも一因です。しかしなんの情報もない状況で自分の行きたい所を決めるのは難しいものです。その場合は、一つでもいいので興味・関心のある業界・会社を定め、その情報収集と学習から入っていく方がいいでしょう。一度やり方が分かれば、その対象を広げていくことが楽しくなります。調べては広げ、広げては調べる作業を続けていく内に、自分のやりたいことが定まっていくと思います。

会社研究・業界研究は、「複数で」・「早く」・「念入り」にしなければなりません。複数でというのは、一つだけだとその企業で内定がとれないと、それで就活は終わりとなるからです。複数で準備しておけば、どれかの就活で失敗しても他のところに挑戦できるからです。早くというのは、会社研究・業界研究はやってみると、意外に時間がかかるものだからです。念入りにというのは、時間をかければかけるほど、確実に成果を得られるものだからです。

その方法は簡単です。勉学や卒論学習と同じで、インターネットと図書館を使ってしっかりと情報収集をして、その資料や情報を学習をすればいいのです。

インターネットを使えば会社のホームページにアクセスでき、その企業の経営理念や財務状況を知ることができますし、同業他社と比較することによって、その会社の特徴や問題点などを調べることができます。
インターネットでは、会社名や業界名をキーワードにして検索をすれば、容易に多くの情報を入手できます。
図書館(大学あるいは公立図書館)では、新聞、論文、書籍などでも、キーワード検索で大量の情報を得ることができます。新聞記事のデータベースからキーワード検索できるシステムを入れている図書館もあります。

わたしの国際金融論の講義を熱心に聴いていた他学科の学生さんの話です。あるときキャンパスを浮かない顔をして歩いていたので、声をかけました。就活がうまくいっていないというのです。研究室によんで話を聞いたところ、会社・業界研究をしていないのです。もうあまり準備時間がないので、大学図書館の新聞検索「聞蔵」を使い、会社・業界のキーワードで検索し、その記事だけでも学習しなさいと指導しました。しばらくして嬉しそうな顔で研究室に来ました。採用人数のきわめて少ない会社とそれ以外のもう一つから内定を得たというのです。印刷した分厚い新聞記事を持っていました。この学習成果もあったが人事担当と対等に話せる自信を得たことも大きかった、と言っておりました。

(3)みてもらえるエントリーシート(自己PR)を書くべし

就活の入り口は二つあり、一つは、就職したい会社にその指定様式の文書(エントリーシートといいます)を書いて応募する入り口です。もう一つは、次に述べます会社説明会・合同説明会です。

エントリーシートの審査という就活の入り口は、いくら能力があっても、これを通り抜けないと、それ以降のコースに進めない最初の重要な関門です。
有名企業ともなると、数万通にもなるエントリーシートが送られてくるといいます。企業はこの大量のエントリーシートのなかから、面接をして実際に会ってみたい学生さんと、ボツにする学生さんとを選別するのです。人事課だけでは無理で外部のそれ専門の人の応援も得て、この作業をする場合もあるらしいです。それでも1通当たり数秒しか目を通せないという話も伝わっています。そうだとすると、ぱっと見でも目にとまり、分かってもらえるような書き方をしなければなりません。そしてぜひこの学生と会って話をしてみたいと、思ってもらわなければならないのです。

ではどのように書けばいいのでしょうか。
次の五つの基本原則だけは守る必要があると、わたしは考えます。

①箇条書き、結論を先に、次に具体的根拠を示す。
ぱっと見でも分かりやすい文書様式は、ビジネス文書のそれです。ビジネス文書の様式は、用件を項目ごとに箇条書きで分け、結論を先に示し、その後に説明文書を書くという方法です。
例えば、三つのことをアピールしたいとした場合の様式は次のようになります。「わたしがアピールしたいことは次の三つです。(改行)第1にーーーということです。(改行)その具体的根拠。第2にーーーということです。(改行)その具体的根拠。第3にーーーということです。(改行)その具体的根拠。」

結論が最初にあり、項目ごとに整理されているので、結論を目で追うだけで全体をすぐに理解できます。それでこれは面白いなと関心をもってもらえば、次の具体的根拠も読んでもらえるのです。

そう言われてもイメージがわかないという方は、新聞の紙面を参考にしてください。新聞紙面は、「見出し」、「簡単説明」、「詳細説明」の構成になっています。見出しだけみれば、それで、なにがどうなったのかが分かります。さらに内容を知りたければ、最初の説明文書を読めば基本が分かります。いっそう詳細に知りたければその後の説明文書を読めばいい、このような構成なのです。エントリーシートを書く場合の「結論」に当たるのが「見出し」であり、「具体的根拠」に当たるのが「説明文書」なのです。

ゼミ生になんの指導もせずエントリーシートを書かせてみると、ダラダラと何を言いたいのか分からない文書を書いてきます。誰でも最初はそうなのです。しかし何度か練習するうちに、分かりやすい文書になります。繰り返し、書いたものを読み直し、また書き直してみましょう。

②学業・課外活動で自慢できる材料を探す。
エントリーシートに書く際に、自己アピールを書かせるところが多いです。自分の売り材料はなんですか、ということですね。就活とは会社に自分を売り込むことですから、自分という商品の良いところを、気後れすることなく、堂々と、宣伝する必要があります。
ゼミ活動、資格、留学経験、大学イベント運営、ボランティア、部活、サークルなどの諸活動をふりかえって、自分が自慢できる材料を探してみてください。どんな小さなことでも、自慢できそうなことをすべて書き出し一覧メモにしてみましょう。
その中から、面接で聞かれたとき自信をもって話せること、つまりぜひ聞いてもらいたいことを、いくつか選び出してみましょう。それを使って自己アピール文書を作成してください。
自己アピールにそれを書けば、面接で質問されると、考えておいてください。それを聞かれた場合に、堂々と説明できるようイメージ・トレーニングをしておく必要があります。

③アルバイトは書かないのが無難。
業務内容が就活先企業の仕事と直接に関係しているアルバイトなら、それを書いても評価されることがあるでしょうが、そうでない場合には、(1)で述べた理由から、書かない方が無難だろうと、とわたしは考えます。
学生さんはアルバイトは社会経験・職業体験なので企業は評価するだろうと考える傾向がありますが、企業はそれを求めていないので、そのミスマッチがあることを指摘した新聞記事もありました。

④誤字・脱字がないか印刷してチェックする。
自分が気づかないところで、誤字や脱字、表現のミスはあるものです。とりわけワープロで作成した文章は意外にミスがあります。印刷をしてみて、その紙面をにらんで校正してみましょう。

⑤友人や家族などの第三者に読んでもらって手直しする。
自分一人で考えて書いたものは、どうしても独りよがりになる傾向があります。誤字・脱字や表現のミスなども気づかないことが多いです。第三者に読んでもらって、チェックしてもらいましょう。友人や家族など、遠慮なく問題を指摘してくれる人が望ましいと思います。

(4)会社説明会・合同説明会のとき学生選別は始まっている

就活のもう一つの入り口は、会社が自分の会社の概要や特徴、募集方法を説明したり、資料を渡したりする会社説明会・合同説明会です。
学生のなかには友人と連れだって、物見遊山の遊び感覚で行く人も多いです。会社側の説明を受け身的に聞くだけだ、との気楽な気分があるのでしょう。
しかしこれは大間違いなのです。

会社側では、その時点での学生さんの態度や話から判断して、見どころのある学生さんを物色しておりますし、これは問題あるとみられた学生さんには、それ以降の面接の日程連絡が来ないこともあります。
このときすでに学生選別は始まっているのです。そのことを頭に入れ、しっかりと準備をして、会社説明会・合同説明会に臨むようにしましょう。

その準備とは、先の(2)で述べた会社研究・業界研究の成果を基に、質問したいことや説明を求めたいことなどを文書で整理した上で、頭に入れておくことです。

十分に学習した上で準備して臨むと、会社説明会・合同説明会の時点で、内定を出すところもあります。それ以降の人事や重役による面接などの日程を省いてまで、その学生さんをぜひ確保したいと考えたのでしょう。   

わたしのあるゼミ生は、会社説明会のおり、みんなが会場の後ろに固まって座っていても、最前列の真ん中に陣取りました。そして入念に準備した質問をしたところ、すぐに別室によばれ内定を告げられました。かなり優良な地方銀行なので選抜も数段階あるとわたしは思っていたのですが、そのように採用する場合もあったのです。そのゼミ生がぜひ欲しい人材だったのでしょうか。

しかししっかりと準備しておかないと、逆にボロを出して失敗を招くこともあります。会社説明会・合同説明会は両刃の剣だということを忘れないようにしましょう。

(5)礼儀、マナー、笑顔を忘れるな

どのような会社でも、いろんな取引先や顧客との対応やコミュニケーションは、必須の仕事です。その場で社員が相手に不愉快な思いをさせたりすると、会社の信用や評判を落としてしまいます。礼儀、マナーを守り、好感をもてるようにすることは、企業イメージを高めるために重要な原則です。笑顔は誰にも好感を与えます。専門家を招き、組織全体で笑顔をつくる練習をしている会社もあるぐらいです。

あるゼミ生が会社訪問に行ったところ、受付嬢から採用担当者さらに一般社員までが彼の氏名を知っていて、「君が…あの学生さんか」と騒がれたというのです。後でその理由を教えてもらったら、会社案内を依頼があった全国の大学生に送付したところ、ハガキでお礼を書いてきたのが、その彼一人だったということでした。彼はその場で、即、内定を得ました。会社が礼儀、マナーを重んじるという一つの例です。

(6)就活は場慣れで成長

就活では、年上の社会人である採用担当者や会社の重役などと会って話をするのですから、誰でも最初は緊張します。頭が真っ白になったり、顔が引きつったりするなどのことは、誰でも経験します。しかし実際に何度もこれらを経験すると、慣れて堂々と対処できるようになるのです。
第1志望の本命会社があれば、その本番前に、いくつかの会社を受けて慣れておくことも必要でしょう。

わたしは、ゼミで就活を終えた上級生とこれからという下級生との就活懇談会を毎年開催してきました。上級生は自分の体験を語ってなんらかのアドバイスを与え、下級生が質問するという方式です。懇談会の後で下級生に感想を聞いてみると、みんながそろって、自分にできるのだろうかと不安を口にしました。ところがその下級生だった学生さんが上級生になり、就活を終えてみると、堂々と自分の体験を下級生に語っているのです。毎年そうなのです。
昔からのことわざに、「学ぶより慣れろ」とありますが、それは本当です。体験と場慣れが学生さんを成長させるのです。

(7)ブラック企業を見分けよ

厚労省認定の若者応援企業が実はブラック企業だったので、心身をこわした女性新入社員がその会社を提訴する事件が起きました。学生人気企業であった電通でも、女性社員が過労うつから自殺したことで、電通もブラック企業だったのかと大きな社会問題になりました。
わたしが1回生ゼミで知り合った学生から10年ぶりにメールで連絡があったのですが、就職した会社がブラック企業だったので体をこわして辞めた、との残念な報告でした。

ブラック企業とはどのような企業でしょうか。
ブラック企業と闘う弁護士さん達が、次のように定義しました(ブラック企業対策弁護団編『ブラック企業を許さない―立ち上がった若者に学ぶ闘い方マニュアル』かもがわ出版、2014年、p.31)。

狭い意味では、
「新興産業において、若者を大量に採用し、過重労働・違法労働によって使い潰し、次々と離職に追い込む成長大企業」のことです。
新興産業とは、IT産業、大手外食産業、大手小売り企業、介護・福祉関係企業などです。
広い意味では、
「違法な労働を強い、労働者の心身を危険にさらす企業」のことです。
ブラック企業は新興産業に限らないのです。

「若者の使い捨て」が疑われる企業への厚労省の立ち入り調査(2013/12/17)によると、8割に法令違反があり(「違法な時間外労働」(43.8%)、「賃金不払いの残業」(23.9%)など)、是正勧告をしました。

ブラックバイトを強いる企業もブラック企業です。
ブラックバイトについてはあとで述べます。

ブラック企業では次のようなひどい悪質な事例があるといいます。
以下の文献を基に、八点にまとめてみました。(ブラック企業対策弁護団編『ブラック企業を許さない―立ち上がった若者に学ぶ闘い方マニュアル』かもがわ出版、2014、pp.37~42。NPO法人POSSE 今野晴貴・川村遼平『ブラック企業に負けない―こんな会社は要注意』株式会社旬報社、2011、pp.20~33。)

①パワーハラスメント、セクシャルハラスメントの日常化。
軍隊的指導やカルト的研修、絶対服従、殴る・蹴るの暴力、過剰な叱責。自己退職に追い込む。
②長時間労働の強要。
朝7時から夜11時が日常。月80時間を超える残業は過労死ライン。うつ病から過労死・過労自殺。
③精神的に追い詰めて自分から退職するように仕向ける。
業務命令として無理な課題や仕事を押しつけ自己退職を迫る。
④派遣など非正規雇用のまま、安い給与で使い続ける。
⑤管理監督者制度や裁量労働制を濫用する。
店長や管理職にさせたり、裁量労働制(労働時間規定なし)を悪用して、ただ働き残業を強いる。
⑥過労うつ、過労自殺、過労死などの労災の隠ぺい。
長時間労働のため病気や過労死にあっても労災申請させない。医療費等は自己負担になる。
⑦詐欺まがいの契約や誇大広告。
求人や面接などの説明と、実際の契約書や入社後の仕事と待遇が異なる。基本給に残業代が含まれていることもある。
⑧給料からの違法な天引き。いろんな名目で給料から違法な天引きを行う。

就活のさいに、就活相手先がブラック企業ではないかどうか、時間をかけてしっかりと調べましょう。人気があるから、知名度があるから、マスコミで名前が出ているから安心、というわけではありません。
なによりも、企業に選別競争をあおられるのではなく、こちらから企業を選択できる力量と専門的知識を身につけることが最善の策です。
また、たとえ就職した会社がブラック企業であったり、途中でブラック化したとしても、専門家や労働組合と協力して、法令違反をやめさせ、働きやすい会社に改善してもらいたいと願います。
ブラック企業がまん延すれば、若者が技能や経験を身に着けられなく、家庭をもてなく、子育てもできなくなるので、技能不足と人口減少で日本の将来は危くなります。ブラック企業をなくすため世論を高めることが必要です。

ブラック企業の見分け方ですが、次の無料の参考文献①②③を入手して、学習することをお勧めします。
いずれの文献も、次のブラック企業対策プロジェクトのサイト(http://bktp.org)のDownloadsページから無料でダウンロードできますので、読んでおきましょう。

①ブラック企業対策プロジェクト『ブラック企業に就職するのが怖いけど、どうやって見分ければいいの:ブラック企業の見分け方―大学生向けガイド』2013、無料。
②ブラック企業対策プロジェクト『企業の募集要項、見ていますか?―こんな記載には要注意!』2014、無料。
③ブラック企業対策プロジェクト『知っておきたい:内定・入社前後のトラブルと対処法』2014、無料。

ブラック企業対策プロジェクトのDownloadsページ
http://bktp.org/downloads/

これらの参考文献の一端を紹介します。詳しくは本文を読んでください。
・業務内容を具体的に説明しない会社に要注意。「若手でも活躍できる」という会社に要注意。
・不自然な大量採用に要注意、使い潰して辞めさせる積もり。すぐに内定が出る会社に要注意。
・『就職四季報』で、「3年後離職率」、「月平均残業時間」、「35歳賃金」、「平均勤続年数」を調べる。
・『会社四季報』で、「平均年齢」、「平均年収」を調べる。
・『有価証券報告書』で、労働組合の有無を調べる。
・『雑誌・新聞記事データベース』で、労災や残業代不払い、労使紛争、経営実態などをチェック。
・『求人情報』で、「基本給」に残業代を含む「固定残業制度」を掲げる会社は要注意。
・『求人情報』で、早期店長登用、早期管理職登用を掲げる会社は、「名ばかり管理職」を悪用して残業代を払わない。
・正社員として採用しながら、入社後は「準社員」「トライアル雇用」という会社は要注意。

ブラックバイトへの対処法

現代の大学生がアルバイトをしないと学業を続けられない状況にあることは前述しましたが、そこにつけ込んで学生を搾り取るブラックバイトがまん延するようになりました。ブラック企業とブラックバイトとは双子の関係なのです。

ブラックバイトについても、学んでおきましょう。
ブラックバイトとは、次のようなアルバイトのことです(大内裕和教授・中京大学国際教養学部による定義)。
「学生であることを尊重しないアルバイトのこと。フリーターの増加や非正規雇用労働の基幹化が進むなかで登場した。低賃金であるにもかかわらず、正規雇用労働者並みの義務やノルマを課されたり、学生生活に支障をきたすほどの重労働を強いられること。」
つまりブラックバイトとは、低賃金と重労働のため、学業を続けるのかが困難になったり、心身をこわしてしまう恐れのあるアルバイトのことなのです。

まずは、自分のしているアルバイトが、「ブラックバイト」かどうかチェックしてみましょう。
ブラックバイト・ユニオンのサイトにブラック度チェックページがあります。そのサイトに入ってみると、「ブラックバイト・チェックシート」があります。この「ブラックバイト・チェックシート」をみて、当てはまる事例がいくつあるか調べてください。3個以上当てはまったら完全にブラックバイトです。

ブラックバイト・ユニオンのサイトにあるブラック度チェックページ
http://blackarbeit-union.com/cases/check/index.html

ブラックバイトとはどのようなバイトなのかを知るには、次の事例集を読めば分かります。そこには解決事例もありますので、学習することができます。

ブラックバイト・ユニオンのサイトにあるブラックバイト事例集と解決事例
http://blackarbeit-union.com/cases/index.html
http://blackarbeit-union.com/cases/settle/index.html

ブラックバイトに対して、どのように対処すればいいでしょうか。
一つは、上記のブラックバイト解決集を学んだり、次の文献を入手して学習する方法があります。

ブラック企業対策プロジェクト『ブラックバイトへの対処法』2014、無料。

この文献は、ブラック企業対策プロジェクトのサイト(http://bktp.org/)のDownloadsページから無料でダウンロードできますので、読みましょう。

ブラック企業対策プロジェクトのDownloadsページ
http://bktp.org/downloads/

もう一つの対処法は、専門家に相談することです。
このページの末尾で紹介する相談窓口は、無料で、メールと電話相談に応じてくれます。またユニオン(組合)に加入すれば、ブラックバイト企業との団体交渉の応援に来てもらったりして助けてもらえます。

最後に、ブラック企業やブラックバイトに負けないための四原則を示しておきましょう。これはNPO法人POSSEが、「ブラック企業に負けない合い言葉」として呼びかけているものです。

①会社(バイト先)のいうことが、すべてではない。
ブラック企業(ブラックバイト企業)は平然と違法をして居直る。職場がおかしいと感じたら、たいてい労働法違反。
②あきらめない!、自分を責めない!。
ブラック企業(ブラックバイト企業)は労働者が悪いと思わせ服従させる。労働法にもとづき自分が正しいと権利を主張すること。
③おかしい・つらいと感じたら、迷わず専門家に相談する。
次に紹介する相談窓口は、無料で、メールと電話相談に応じてくれる。ユニオン(組合)に加入すればブラック企業(ブラックバイト企業)との団体交渉の応援に来てもらったりして助けてもらえる。
④証拠・記録を残す(就職前から就活時そして入社して。バイト前からバイト時も)。
証拠と記録は、会社と交渉するとき、さらに専門家と相談するとき、またうつ病などの労災申請や訴訟になったときに重要。契約書類(求人情報、会社説明会資料、雇用契約書、就業規則など)、労働時間(タイムカードコピー、労働時間メモなど)、パワハラ・セクハラ(ICレコーダーの録音など)。

ブラック企業・ブラックバイトの主な相談窓口

・ブラック企業被害対策弁護団
TEL:03-3379-6770
http://black-taisaku-bengodan.ne.jp/

・NPO法人POSSE(ポッセ)
http://www.npoposse.jp/
TEL:03-6699-9359
E-mail:soudan@npoposse.jp/

・ブラックバイトユニオン
http://blackarbeit-union.com/
TEL:03-6804-7245、
E-mail:info@blackarbeit-union.com/
若者が一人でも加入できる若者のためのユニオン(労働組合)

・首都圏青年ユニオン
TEL:03-6804-7245、
E-mail:info@blackarbeit-union.com/
若者が一人でも加入できる若者のためのユニオン(労働組合)

・札幌学生ユニオン
sapporo-gakusei-union.jimdo.com/

・都留文科大学学生ユニオン
TEL:080-4442-8150、@tsurubununion
大学単独で学生のためのユニオン(労働組合)結成。

・関西学生アルバイトユニオン
メールでの問い合わせ:uniuni.kanuni@gmail.com/