金融の公共性研究所の設立理念と目的
The Idea and Purposees to establish the Institute of Research
and Development on Public Welfare in Financial System.
金融・国際金融およびその基礎をなす貨幣は、人類および人類社会に多大な利便を与えましたが、その一方でさまざまな 弊害をもたらしてきました。
古代から現代まで続く貨幣欲が引き起こす様々な犯罪、黄金をめぐる争奪戦や侵略戦争、古代から現代まで繰り返し発生したところの、貨幣発行権をもった権力者が貨幣減価によって富をかすめ取る貨幣安インフレーション(庶民には生活圧迫の大衆課税)、フランス革命時のアッシニア紙幣、アメリカ南北戦争時のグリーンバック紙幣、第一次世界大戦後のドイツ・マルクおよび第二次大戦後の日本・円が引き起こしたハイパー・インフレーション(急激で激しい物価上昇)、現在も一部途上国で起きているハイパー・インフレーション、歴史的に何度も繰り返されたいわゆるバブルと称される泡沫的投機熱とその崩壊、1929年10月のアメリカ証券取引所の株価大暴落に始まった世界大恐慌、戦後では、アメリカの金・ドル交換停止にともなう世界の通貨・為替市場の大混乱(いわゆるニクソン・ショック)、1960年代からの中南米累積債務危機、1997年のアジア通貨危機、1998年のロシア通貨危機、そして2008年のアメリカ発のリーマンブラザーズ倒産を機に激化した世界金融危機、富裕層や巨大企業の経営者たちに大多数保有された金融資産が、政治・経済・メディアを支配し、経済格差・所得格差を拡大再生産する道具になっていることなど、枚挙にきりがないほどです。
1960年代に激化したところの金融覇権を争う国際的な規制緩和競争(金融の自由化・国際化)によって、銀行・証券・保険を統合した垂直的・水平的な金融機関の合併が大規模に進み、巨大な金融複合企業集団(金融コングロマリット)が出現し、通貨・金融先物取引所の新設と証券取引所の統合、そして金融先物・オプション・証券化取引などのいわゆるデリバティブ取引・オフバランス取引(財務諸表に明示されない簿外取引)が増大し、レバレッジ(借金取引)を競う投機的金融取引が盛んになって、金融・国際金融はますます巨大で複雑・難解なものに、そして一般市民から遠ざかった見えないものになり、利用者や社会に対して権威的にふるまい脅威である存在にまで至りました。
公共財である金融・国際金融は私物化され、一握りの情報強者である巨大複合金融企業集団、職業的投機集団(ヘッジファンド)、富裕層が情報弱者を略奪する金融になり、暗闇金融や密室金融がはびこって腐敗し、ハイリスクな金儲けが引き起こした世界金融危機(いわゆるリーマンショック)の巨額損失は、失業、物価上昇、増税などによって無関係な弱者に押しつけられ、世界は疲弊しています。
巨大金融機関救済のために巨額の財政資金が投入され、それが増税・福祉切り捨てと財政危機を引き起こし、それがまた金融危機を再燃するという悪循環の中にあります。量的金融緩和政策という名の、巨額の通貨を放出する自国貨幣安競争(日本ではアベノミクス)は、大企業を為替差益によって大儲けさせながら、中小企業や市民には原材料価格高騰と物価上昇による生活難を押しつけています。
このような状況は明らかに異常です。金融・国際金融が公共財・国際公共財として適切に制御されてこなかったからです。
金融の公共性研究所は、「金融・国際金融はみんなの公共財・国際公共財であり、みんなの持続的幸福に寄与できるように、みんなで制御されるべきである」との理念のもと、次の八つの活動を行います。
第1に、金融・国際金融が公共財・国際公共財であることについて、知見と理解を深めることです
学界においては「新古典派」や「公共経済学派」のいわゆる「非競合性・非排除性」公共財論が大きな影響力をもち、金融・国際金融が公共財・国際公共財であることは論外のことで、無視されています。
その原因は、それ以外の諸学説にも共通していますが、そもそも「公共性」あるいは「公共財」についての理解と理論的方法が、狭くて、硬直的、だからです。それゆえ、「公共性」あるいは「公共財」という概念を、もっと広く、「人間の集合的行為様式・行為関係」としてとらえ直し、金融・国際金融や環境、国家、財政、公共事業、企業など他の集合的行為様式もふくめて、再構築しなければなりません。そして、なぜ、どのように、どのような場合に、この「集合的行為様式・行為関係」が変質したり、劣化して崩壊したり、あるいは持続できたりするのかを、人類史的視点で、さまざまな角度から検討しなければならないのです。
当研究所は、この課題に関心をもたれた高校生や大学生の方、無職の市民の方、専業主婦の方、非正規労働者の方、企業や金融機関にお勤めの方、研究・教育機関にお勤めの方、行政機関にお勤めの方、その他の団体・組織にお勤めの方、すでに退職されて年金生活の方などとの交流と対話そして連携を強め、この課題の進展に努力いたします。
第2に、人類の持続的幸福に寄与する公共財としての、金融・国際金融のあり方について、知見と理解を深めることです。
金融・国際金融の基礎である貨幣は、富の共通の等価物であるという強大な万能権限を社会から与えられました。この万能権限によって、あらゆる富に共通単位をつけ、その富の交換、移動、分配・再分配、貯蔵、自由な貸借が可能になり、この働きによって社会や国際社会の生活と生産・再生産が支えられています。
しかし貨幣は富の共通等価物であっても、人類の持続的幸福を支える富そのものではありません。ところが貨幣の万能性とカネがカネを生み出す増殖力は、カネさえ儲かれば後はどうなっても構わないという拝金主義となって、人間の心や人間を支配し、さらに政治・経済・企業・社会を支配して、富の持続的な生産・再生産を困難にする弊害をもたらすようになりました。
このような弊害を防止して人類の持続的幸福を増進するため、「平和」、「民主主義」、「環境保護」、「脱原発と再生可能エネルギー(自然エネルギー)の振興」、「人権尊重」、「消費者・顧客利益尊重」、「労働者・従業員利益尊重」、「貧困・格差是正」、「透明性・情報公開促進」、「リスク管理」、「コンプライアンス(倫理・法令・国際規範順守)」、「コーポレート・ガバナンス(企業の公正・誠実・透明性内部管理)」、「地域貢献」、「社会貢献」、「国際社会貢献」などの、社会的責任・国際的責任諸課題の実現に向けて、貨幣の使い方と金融・国際金融の働きを制御しなければなりません。これらの課題は人類、人類社会さらに地球社会にとって重要なものになっていますし、地球温暖化の危機が深刻になっていくこれから、ますますそうなります。
当研究所は、この課題に関心をもたれた高校生や大学生の方、無職の市民の方、専業主婦の方、非正規労働者の方、企業や金融機関にお勤めの方、研究・教育機関にお勤めの方、行政機関にお勤めの方、その他の団体・組織にお勤めの方、すでに退職されて年金生活の方などとの交流と対話そして連携を強め、この課題の進展に努力いたします。
第3に、利用者にやさしい、市民や社会にやさしい、国際社会にやさしい金融・国際金融の公共財としてのあり方について、知見と理解を深めることです。
金融・国際金融およびその基礎をなす貨幣は、多様な誰もが利用し、さまざまなことに利用でき、情報とコミュニケーションがつくり出す信用と信頼で結びついている公共財です。この公共財としての条件を満たすためには、金融そのものや金融の仕組み、金融用語などが、どのような状況にあるどのような人であっても容易に理解でき、簡単で安心して利用できること、さらに金融に関する情報は誰にとってもわかりやすく公表・開示されていること、このように金融環境と金融制度をデザインすることが必要になります。すべての人にとっての「知りえる金融」、「みえる金融」、「わかる金融」のデザイン化です。このような金融制御方法をわたしは「金融ユニバーサルデザイン」と定義しましたがこの具体化と実践化が求められています。
当研究所は、この課題に関心をもたれた高校生や大学生の方、無職の市民の方、専業主婦の方、非正規労働者の方、企業や金融機関にお勤めの方、研究・教育機関にお勤めの方、行政機関にお勤めの方、その他の団体・組織にお勤めの方、すでに退職されて年金生活の方などとの交流と対話そして連携を強め、この課題の進展に努力いたします。
第4に、金融論・国際金融論を、「投機の学問」、「金儲けの学問」、「拝金主義を煽る学問」、「投資ゲームの学問」、「難解さでまどわす学問」、「権力におもねる学問」ではなく、「人類の持続的幸福に寄与する公共財として探究する学問」として発展させることです。
大学在職中、「金融ときいてどう直感するか」という項目の学生アンケートを毎年実施してきましたが、「苦手」、「難しい」、「数式」、「汚いイメージ」、「ダーティー」、「金儲け」、「投機」、「一獲千金」、「借金」、「詐欺」、「ヤミ金」などの回答が圧倒的に多くて、大いにショックを受けました。学生にこのように答えさせるようになったことの、金融業界・行政・マスコミ、学界の責任は重いです。
当研究所は、この課題に関心をもたれた高校生や大学生の方、無職の市民の方、専業主婦の方、非正規労働者の方、企業や金融機関にお勤めの方、研究・教育機関にお勤めの方、行政機関にお勤めの方、その他の団体・組織にお勤めの方、すでに退職されて年金生活の方などとの交流と対話そして連携を強め、この課題の進展に努力いたします。
第5に、若者の経済教育・金融教育および企業・金融機関・行政の管理職と現場教育において、社会的責任意識と職業倫理(モラル)を高める社会的責任教育および社会的責任金融教育のあり方とその有効な方法について、知見と理解を深めることです。
社会的責任金融教育とは、金融における社会的責任意識を高める人材教育です。金融消費者についていえば、投資ゲームに走るのではなく、資産・負債やリスクを自己管理でき、人類の持続的幸福に寄与できる金融・国際金融の視点から、金融機関を評価・選択できる人材の育成です。
金融職業人についていえば、人類の持続的幸福に寄与できる金融・国際金融のあり方を考え実践でき、社会的リスク管理能力や意識が高く、プロとしての高度な職業的倫理意識をもち、情報公開に熱心であり、金融消費者に信頼され、その専門的知識を社会に還元できる人材の育成です。
当研究所は、この課題に関心をもたれた高校生や大学生の方、無職の市民の方、専業主婦の方、非正規労働者の方、企業や金融機関にお勤めの方、研究・教育機関にお勤めの方、行政機関にお勤めの方、その他の団体・組織にお勤めの方、すでに退職されて年金生活の方などとの交流と対話そして連携を強め、この課題の進展に努力いたします。
第6に、社会的責任・国際的責任諸課題の実現に向けて活動している諸個人や諸団体との交流と対話そして連携を強め、活動をすすめます。
社会的責任・国際的責任課題とは、「平和」、「民主主義」、「環境保護」、「脱原発と再生可能エネルギー(自然エネルギー)の振興」、「人権尊重」、「消費者・顧客利益尊重」、「労働者・従業員利益尊重」、「貧困・格差是正」、「透明性・情報公開促進」、「リスク管理」、「コンプライアンス(倫理・法令・国際規範順守)」、「コーポレート・ガバナンス(企業の公正・誠実・透明性内部管理)」、「地域貢献」、「社会貢献」、「国際社会貢献」などです。
第7に、誰にでもできて、簡単で、長続きする運動(筋肉トレーニング)方法を開発するとともに、より有効な方法について、知見と理解を深めることです。
わたしは、ユニバーサルデザイン原則を運動と筋肉トレーニングに応用してこの方法を開発し、それを「運動(筋トレ)ユニバーサルデザイン」と名づけました。この方法は、肉体的に自立して生活できる健康寿命を延ばしたい高齢者の方々、およびどのように運動しても長続きしない運動弱者の方々にとっては、有効な方法と思われますが、まだ課題は多いです。
当研究所は、これらの問題に関心をもたれている方々やこの問題に取り組んでおられる団体との交流と対話そして連携を強め、さらに有効な方法の開発に努力いたします。
第8に、当研究所は、以上に述べた諸課題を探究するため、関係情報の収集と紹介に励み、研さんを積み、これらの諸課題に関する知見と理解を促進し、それらの成果の発信と啓もうに努めることです。
そしてこれらの諸課題に関心をもたれた高校生や大学生の方、無職の市民の方、専業主婦の方、非正規労働者の方、企業や金融機関にお勤めの方、研究・教育機関にお勤めの方、行政機関にお勤めの方、その他の団体・組織にお勤めの方、すでに退職されて年金生活の方などの間での情報交流と対話をすすめ、このネットワークを広げるとともに、その成果を蓄積し、だれもが情報入手できるようにいたします。当研究所は、この情報ネットワークの中継点としての役割および交流成果の保存・管理者としての役割を果たします。
(2014年1月26日起草)