社会的責任基準・国際的責任基準

紀国が「社会的責任基準・国際的責任基準」と考えるものを紹介します。

(このテーマにご関心があれば、ご自由にご参加ください。
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またこのテーマについての有益な情報があれば、同じくその下にある「学習・研究情報の広場」にコメントを書き、送っていただくことができます。)


社会的責任基準・国際的責任基準にはどういうものがあるでしょうか。

(人類の持続的幸福のために必要な政策課題・行動課題については、国際機関やそれぞれの国においてさまざまな行動基準や法制度などが策定され、EUではCSR担当大臣をおく国もあるなど、先進的な取組みが行われています。
今では、多くの社会的責任基準・国際的責任基準が作成されて、取り組まれるまでになりました。それらの多くは理念的にも政策的にも優れた内容のものです。
しかしながら、それらは、宣言とか原則を明らかにした性格のものであったり、指針とかガイドラインなどのように拘束力が弱かったりして、実効性の確保という点での問題を残しています。
実効性を推進するにはどうすればいいでしょうか。これからの重要な研究課題です。

以下、社会的責任基準・国際的責任基準のいくつかと金融に関係するものを紹介いたします。年代順に並べてみました。
Web上のホームページから原文を参照して紀国の責任で邦訳し、邦訳されている訳文もわかりやすいように手直したり、長いものは要約したりしました。)


国際労働機関(ILO)の目的に関するフィラデルフィア宣言(1944年)

国際労働機関(ILO)とは、国際連合の専門機関の一つで、主に労働問題を扱っています。国際機関のなかで唯一、政府・労働者・使用者の三者構成をとっていて、現在では180ヵ国が参加しています。1944年5月フィラデルフィアにおいて、国際労働機関の目的および加盟国の政策の基調をなす原則に関する次の宣言を採択しました。

国際労働機関の目的に関するフィラデルフィア宣言(1944年)
①労働は、商品ではない。
②表現および結社の自由は、不断の進歩のために欠くことができない。
③一部の貧困は、全体の繁栄にとって危険である。
④欠乏に対する戦は、各国内において不屈の勇気をもち、および労働者および使用者の代表者が、政府の代表者と同等の地位で、一般の福祉を増進するための自由な討議および民主的な決定に共に参加して、継続的および協調的な国際的努力が行われることを必要とする。
(紀国正典仮訳)


世界人権宣言(1948年)

1948年に第3回国際連合総会の決議として採択されました。人権確立のために人類がその英知を結集した成果をまとめた国際文書です。前文と30条の項目から構成されています。以下、概要の紹介です。

世界人権宣言(1948年)
・すべての人間は生まれながらにして自由であり、尊厳と権利は平等である。
・すべて人は人種・皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見、出身、財産などによる差別を受けなく、すべての権利と自由を享受する。
・生命、自由、身体の安全の権利をもつ。
・奴隷、苦役に服することはない。
・拷問、残虐的な取扱を受けることはない。
・法の下で人として認められる権利をもつ。
・法の下において平等である。
・基本的権利の侵害に対し裁判を受ける権利をもつ。
・ゆえなく逮捕・拘禁・追放されることはない。
・裁判所の公正で公開の審理を受ける権利をもつ。
・有罪立証あるまで無罪と推定される権利をもつ。
・私事、家族、家庭、通信に対する干渉に対して保護を受ける権利をもつ。
・自由に移転・居住する権利をもつ。
・他国に避難する権利をもつ。
・国籍を得る権利ををもつ。
・制限を受けることなく婚姻・家庭をつくる権利をもつ。
・財産を所有する権利をもつ。
・思想・良心・宗教の自由に対する権利をもつ。
・意見・表現の自由に対する権利をもつ。
・平和的集会・結社の自由に対する権利をもつ。
・自国の政治に参与する権利をもつ。
・自己の尊厳と自己の人格の自由な発展に欠くことのできない経済的・社会的・文化的権利を実現する権利をもつ。
・職業選択の自由と失業の保護を受ける権利をもつ。
・労働時間の合理的な制限および休息・休暇を受ける権利をもつ。
・自己および家族の健康・福祉に十分な生活水準を保持する権利ならびに失業等の生活不能のとき保障を受ける権利をもつ。
・すべて人は教育を受ける権利をもつ。
・すべて人は社会の文化生活に参加し、芸術を鑑賞し、科学の恩恵にあずかる権利をもつ。
・この宣言に掲げる権利・自由が実現される社会的および国際的秩序に対する権利をもつ、など。
(紀国正典要約)


国際人権規約(1976年)

世界人権宣言の内容を基本として、それを法的拘束力のある条約にまとめたものです。世界人権宣言の作業を終えた国際連合人権委員会が、1949年から人権規約の草案策定作業に入り、1954年には、二つの草案、「経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約(国際人権A規約)」と「市民的および政治的権利に関する国際規約(国際人権B規約)」が作成されました。その規約草案が1954から1966にかけて国際連合総会で審議され、1966年に採択、1976年に発効しました。人権規約は、法的拘束力のない世界人権宣言と異なり条約ですので、その締約国は、次に定める権利を尊重し、実施のための措置をとらなければなりません。以下、概要の紹介です。

国際人権規約(1976年)
「経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約(国際人権A規約)」
・労働の権利。
・公正かつ良好な労働条件を享受する権利。
・労働組合を結成する権利。
・社会保険その他社会保障の権利。
・広範な保護・援助が家族に対し与えられること。
・自己・家族のための相当な食糧、衣類、住居などの生活水準とその改善の権利。
・身体および精神の健康を享受する権利。
・教育についてのすべての者の権利。
・無償の義務教育を実現すること。
・文化的な生活に参加する権利、科学の進歩の利益を享受する権利、科学的・文学的芸術作品の利益が保護される権利など。

「市民的および政治的権利に関する国際規約(国際人権B規約)」
・生命に対する固有の権利。
・拷問・残虐な取り扱いを受けない権利。
・奴隷制度・奴隷取引禁止。
・身体の自由・安全に対する権利。
・人道的・尊厳的に取り扱われる権利。
・契約不履行で拘禁されない。
・移動および居住の自由の権利。
・公平な裁判による公正な公開審理を受ける権利。
・国内法・国際法以外のことで有罪とならない権利。
・法律の前に人として認められる権利。
・私生活・家族・住居・通信に対する干渉されない権利。
・思想・良心・宗教の自由の権利。
・干渉されることなく意見をもつ権利、表現の自由の権利。
・戦争のための宣伝の法律による禁止。
・平和的集会の権利。
・結社の自由の権利、労働組合の結成権利。
・家族は社会・国による保護を受ける権利。
・すべての児童はいかなる差別もなく家族・社会・国によって保護される権利。
・自由に政治に参与する権利。
・法の前に平等。
・少数民族が自己の文化・宗教・言語を用いる権利。
(紀国正典要約)


経済協力開発機構(OECD)の多国籍企業行動指針(1976年~2000年)

多国籍企業行動指針は、OECD加盟の30ヶ国と非加盟の7ヶ国のあわせて37ヶ国の政府がその順守を確約したもので、多国籍企業に対する唯一の国際的に承認された行動規範です。これまでに4回(79年、84年、91年、2000年)改訂されてきました。

経済協力開発機構の多国籍企業行動指針(1976年~2000年)
①行動指針は多国籍企業に対し良き慣行の原則・基準を提供するものであり、法的強制力をもたない。加盟国政府は行動指針の普及のために国内活動拠点「NCP:
National Contact Points」を設置。
②持続可能な開発の実現、人権の尊重、現地能力の開発、人的資本の形成、企業統治責任(コーポレート・ガバナンス)の維持のために行動。
③活動、組織、財務状況・業績について適時にそして定期的に情報開示。
④従業員の権利の尊重、児童労働・強制労働の撤廃、受入国の水準を下回らない雇用・労使関係基準の採用、従業員の健康・安全確保のための適切な措置、集団解雇の合理的予告などを行う。
⑤環境、公衆の健康・安全を保護し持続可能な開発を実現することに十分考慮。
⑥賄賂その他の不当な利益の申し出、約束または要求を行うべきでない。
⑦消費者との関係において、公正な事業、販売および宣伝慣行に従って行動し、提供する物・サービスの安全性・品質確保のため合理的な措置を実施。
⑧受入国の技術変革能力の発展、受入国への技術・ノウハウ移転に貢献。
⑨法律・規則の枠内において競争的な方法で活動。
⑩納税義務の履行。
(紀国正典仮訳)


国際労働機関(ILO)における「多国籍企業および社会政策に関する原則の三者宣言」(1977年、2000年改定)

1960年代および1970年代において多国籍企業の活動が活発になり、途上国における多国籍企業の活動を規制する国際ガイドラインの策定が必要になりました。国際労働機関(ILO)は、労働関係と社会政策についての次の原則を採択し、ILO加盟国、関係労使団体、ILO加盟国で活動している多国籍企業に、その順守を要請しました。

国際労働機関:多国籍企業および社会政策に関する原則の三者宣言(1977年、2000年改定)
①一般方針(国家の法令に従い国際基準を尊重、世界人権宣言・国際人権規約の尊重、1998年の「労働における基本原則と権利に関するILO宣言」の実現に貢献、受入国の開発・社会的目標と調和を保つために政府・使用者団体・労働者団体と協議)。
②雇用(雇用促進、機会および待遇における均等、雇用の安定)。
③職業訓練の実施。
④労働条件・生活条件(適切な賃金・給付・労働条件の確保、児童労働の撤廃と就業最低年齢の尊重、適切な安全衛生水準の提供)。
⑤労使関係(結社の自由および団結権の尊重、団体交渉の権利の尊重、定期的な労使協議、苦情申し立てと苦情審査の権利の尊重、労使共同で労働争議を解決)。
(紀国正典仮訳)


国際消費者機構(CI)「消費者の8つの権利と5つの責任」の提言(1982年)

国際消費者機構(Consumers International:CI)は、地域、国、地方の消費者団体、消費者の政府機関、消費者関連のグループをメンバーとした非営利の国際的消費者団体です。2015年現在では120カ国で250を超える会員組織で構成されています。1960年に設立され、1995年に旧IOCU から現在の名称に変更されました。すべての消費者のために、公正、安全で持続可能な未来のために取り組んでいます。
消費者の8つの権利は、1962年にアメリカのケネディ大統領が提起した消費者の4つの権利(以下の②③④⑤)を基にして、新しい権利を追加したものです。1980年には当時の議長が、消費者責任も導入するよう要請して5つの責任原則が策定されました。

国際消費者機構:消費者の8つの権利と5つの責任(1982年)
(消費者の8つの権利)
①生活の基本的ニーズが満たされる権利(十分な食糧、衣服、住宅、医療、公共サービス、水、公衆衛生など、基本的で必需な商品・サービスを得られること)。
②安全である権利(健康や生命に危害を加える生産物、生産過程、サービスから守られること)。
③知らされる権利(選択に必要な諸事実および不正で誤った広告や表示から自分を守るのに必要な諸事実を知らされること)。
④選択する権利(満足できる品質をもち競争価格で提供された多くの生産物とサービスの中から選択できること)。
⑤意見を反映させる権利(政府の政策策定と施行および生産物とサービスの開発に際し消費者利益を反映できること)。
⑥救済を受ける権利(虚偽表示、偽物、不満足なサービスの補償をさせるなど、正当な請求に対して公正な解決を受けること)。
⑦消費者教育を受ける権利(基本的な消費者の権利と責任およびそれらに基づきどのように行動すべきかについて学ぶとともに、商品とサービスについて知り、自信をもって選択できる知識と能力を得ること)。
⑧健全な環境で暮らす権利(現在および将来世代の福祉を脅かさない環境で生活し働くこと)。

(消費者の5つの責任)
①批判的意識(商品とサービスの品質についてより敏感に探究意識をもつ責任)。
②自己主張と行動(公平な対応を確実にするために自己主張し行動する責任)。
③社会的責任意識(自分たちの消費行為が他の市民に与える影響について、とりわけ社会的弱者および社会的・経済的現実への影響について関心をもち敏感である責任)
④環境配慮意識(自分たちの消費行為が環境に与える影響について、現在と将来世代の生活の質を改善する重要策として資源保護を促進し、調和的な方法で発展させることに特に敏感である責任)。
⑤連帯(最良でもっとも有効なのは、消費者利益に十分に注意を向け得る力と影響力をもてるように、消費者と市民グループが共に協力的努力をする責任)。
(紀国正典仮訳)


国連「消費者保護のためのガイドライン」(1985年、1999年改定)

国際連合は、1985年の総会で、「消費者保護のためのガイドライン」を全会一致で採択しました。ガイドラインでありますが各国の消費者政策の指針となるものです。1992年の国際連合環境開発会議を受けて、1999年に⑦の「持続可能な消費」が盛り込まれました。政府は、以下に定めるガイドラインと関連する国際合意を考慮して、強力な消費者保護政策を策定し、実施すべきである、とあります。

国連:消費者保護のためのガイドライン(1985年、1999年改定)
①健康と安全に対する危害から消費者を保護すること。
②消費者の経済的利益を促進し保護すること。
③消費者が十分な情報を入手できそれぞれの要望と必要に応じた選択をできること。
④消費者の選択が環境・社会・経済へ及ぼす影響について教育することもふくめ、消費者を教育すること。
⑤効果的な消費者救済策を利用できるようにすること。
⑥消費者団体や関連団体あるいはそのような組織を結成する自由を与えること、およびかれらに影響を及ぼす政策の決定過程で意見を表明できる機会をそれらの組織に 与えること。
⑦持続可能な消費様式を促進すること。
(紀国正典仮訳)


国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則および権利に関する宣言(新宣言)」(1998年)

グローバル化に対応するために、各国が4分野8条約の中核的労働条件を順守する義務があることを宣言したものとして重要です。しかも条約を批准していなくても、その順守が求められ、報告義務が発生します。この原則は、国際連合グローバル・コンパクトおよびCSRについての民間基準さらに国際標準化機構(ISO)のSR規格にも採用されています。

国際労働機関:労働における基本的原則および権利に関する宣言(1998年)
すべての加盟国は、問題となっている条約を批准していない場合においても、まさにこの機関の加盟国であるという事実そのものにより、誠意をもって、憲章に従って、これらの条約の対象となっている基本的権利に関する次の原則を尊重し、促進し、かつ実現する義務を負うことを宣言する。
①結社の自由および団体交渉権の効果的な承認。
②あらゆる形態の強制労働の禁止。
③児童労働の実効的な廃止。
④雇用および職業における差別の排除。
(紀国正典仮訳)


金融団体による環境および持続可能な開発に関する国連環境計画(UNEP)宣言(1992年)

国連環境計画:金融イニシアティブ(UNEP FI)とは、国連環境計画(UNEP)と宣言に署名した世界各地の銀行、証券、保険会社などとのパートナーシップで構成された、国際的な任意のネットワーク組織です。金融機関のさまざまな業務において環境および持続可能性に配慮した最も望ましい事業のあり方を追求し、これを普及・促進することを目的にしています。以下その宣言の概要です。

金融団体による環境および持続可能な開発に関する国連環境計画宣言(1992年)
(1)持続可能な発展に関する公約
①持続可能な発展は健全な事業経営の基本。
②持続可能な発展の最高の方法は、経済的手法で市場を機能させること。政府は長期的視点で指導的役割を果たす。
③金融部門は持続可能な発展の重要な貢献者。
④持続可能な発展は企業の公約。

(2)環境管理と金融団体
①環境に関する予防的方法(アプローチ)の支持。
②環境規制に従い、環境配慮をすべての事業に組み入れる。
③環境リスクの把握は、通常業務におけるリスク評価の一つ。取引先が環境規制に従っているかどうかに注意を払う。
④エネルギー効率、資源再利用、廃棄物削減などに最善をつくす。
⑤環境管理の研究に着手するよう産業界に奨励する。
⑥環境目標に照らして活動状況を評価。
⑦金融分野が環境保護促進の製品やサービスを開発することを奨励。

(3)市民の啓発と市民との対話(コミュニケーション)
①金融機関が環境政策と環境配慮活動の報告書を開発・公表。
②取引先と情報を共有。
③環境問題で株主、従業員、取引先、政府、市民などと開かれた関係と対話をもつ。
④国連環境計画(UNEP)が持続可能な発展に関する情報を提供することを求める。
⑤他の金融機関が当宣言を支持することを奨励。経験と知識をかれらと共有することを公約。
⑥当宣言実施の成果を定期的に検証し、国連環境計画(UNEP)とともに努力する。
(紀国正典要約)


国連グローバル・コンパクト(Global Compact)
(2000年)

この国際的責任原則は1999年のスイスのダボスで開かれた世界経済フォーラムにおいて、当時のアナン国連事務総長が提唱し、翌2000年に国連本部で正式に発足したものです。
グローバル・コンパクトとは、次に紹介する10原則を支持・賛同する企業や団体が、国際連合とパートナーシップを結び、国際的な任意のネットワークを組織していく運動体のことです。10原則は、「世界人権宣言」、「国際労働機関(ILO)の労働の基本的原則と権利に関する新宣言」、「環境と開発に関するリオ宣言」という三つの世界的に確立した合意に基づいたものです。人権・労働・環境・腐敗防止(2004年追加)の次の10原則で構成されています。

国連:グローバル・コンパクト(2000年)
①影響のおよぶ範囲で、国際的に宣言されている人権の擁護を支持し尊重する。
②人権侵害に加担しない。
③組合結成の自由と団体交渉の権利を実効あるものにする。
④あらゆる種類の強制労働を排除する。
⑤児童労働を実効的に廃止する。
⑥雇用と職業に関する差別を撤廃する。
⑦環境問題についての予防的方策を支持する。
⑧環境に関していっそうの責任を担うため主導的役割をはたす。
⑨環境にやさしい技術の開発と普及を促進する。
⑩強要と賄賂を含むあらゆる種類の腐敗を防止するために取り組む。
(紀国正典仮訳)


国連:責任投資原則(2006年)

国連:責任投資原則(UN PRI)は、当時のアナン国連事務総長の呼びかけで、国連
環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)と国連グローバル・コンパクト(GC)が共同で作成したものです。年金基金や資産運用会社などの機関投資家に、「環境・社会・企業統治」の三要素を投資の意思決定過程に組み込むことを求めた原則です。
2006年4月に、国連:責任投資原則の署名式がパリとニューヨークの証券取引所で行われました。これに署名した機関投資家は、その原則に従うことと、その実施状況を報告することが要求されます。この署名式には、16ケ国から66の機関投資家が参加し、その運用資産残高は5兆ドル(約555兆円)超と、世界のヘッジファンドの合計を上回る規模にもなりました。米最大の年金である米カリフォルニア州退職年金基金(カルパース)、世界最大級の2500億ドルを運用するノルウエー政府年金基金、英国最大の年金運用機関ハーミーズなども署名しました。日本からはキッコーマンの企業年金、三菱UFJ信託銀行、住友信託銀行、損害保険ジャパン、大和証券投資信託委託が署名しました。

国連:責任投資原則:UN PRI(2006年)
①投資分析と意思決定過程に「環境・社会・企業統治」問題を組み入れる。
②行動する株主になり「環境・社会・企業統治」問題を株式所有方針や業務に組み入れる。
③投資先に「環境・社会・企業統治」についての適切な情報開示を求める。
④投資業界にこの原則が受け入れられ実施されるよう働きかける。
⑤この原則の実施にさいし有効性が高まるよう協力して取り組む。
⑥この原則の実施に向けた活動と進行状況についてそれぞれが報告する。
(紀国正典仮訳)


国際労働機関(ILO)の「公正なグローバル化のための社会正義に関するILO宣言」(2008年)

グローバル化時代における国際労働機関(ILO)の使命について、10年ぶりに新しいビジョンを示した画期的な宣言です。その根本にあるのは、「ディーセント・ワーク:Decent Work(働きがいのある人間らしい仕事)」という理念で、1999年ILO総会の事務局長報告で初めて提案されました。それは次のように定義されています。「ディーセント・ワークとは、権利が保障され、十分な収入を生み出し、適切な社会的保護が与えられる生産的な仕事ということです。それはまた、すべての人が収入を得るための十分な機会を与えられていて、十分な仕事があることを意味します。」 。これを世界中のすべての人に実現させることをILOの使命と戦略に位置づけたのです。このために次の四つの戦略目標が提案されています。

公正なグローバル化のための社会正義に関するILO宣言(2008年)
①雇用促進のための持続可能な制度・経済環境の創出(個々人の能力と技能の維持・向上、雇用保障できる企業の持続、良好な生活水準の持続)。
②持続可能な社会的保護政策「社会保障と労働者保護」の拡大と強化(社会保障のすべての人への拡大と不確実性への対応、健康で安全な労働条件、すべての人に公正な分配保障と最低賃金保障)。
③政労使の三者構成とその社会対話の促進(雇用およびディーセント・ワーク:働きがいのある人間らしい仕事の戦略についての国内政策・国際政策の合意の円滑化)。
④労働における基本的原則と権利の尊重・促進・実現(結社の自由および団体交渉権の実効的な承認は四つの戦略目標にとって特に重要)。
(紀国正典仮訳)


国際標準化機構(ISO)の社会的責任規格(ISO26000)
(2010年)

国際標準化機構(International Organization for Standardization)とは、電気分野を除き、工業分野の国際的な標準である国際規格を策定するための民間の非政府組織で、150をこえる国の規格団体が参加しています。1947年に活動停止にあった万国規格統一協会 (ISA) を発展させて設立されました。ジュネーブに本部があります。
2004年に、すべての組織が順守すべき社会的責任基準を策定する作業が始まりました(CSRではなくSR:Social Responsiblity規格)。そしてそのガイダンスを策定するために、加盟各国から産業界、労働、消費者、政府、NGO、研究機関の六つの代表者が集まり、他の国際機関とも連携しつつ作業が進められ、2010年に、「組織の社会的責任についての国際標準規格(ISO26000)」が発効しました。
組織の社会的責任について、次のように七つの中核的政策課題と七つの行動原則を挙げております。

国際標準化機構(ISO)の社会的責任規格(2010年)
(七つの中核的政策課題)
①組織管理
社会的責任原則を組織管理方針に組み入れる。組織の意思決定と実施は七つの行動原則に従って行う。
②人権
人権侵害の事前予防。危機的状況でも人権尊重。人権侵害への加担を避ける。苦情解決。社会的弱者の人権擁護。市民的・政治的権利の尊重。経済的・社会的・文化的権利の尊重。労働基本権の尊重。
③労働慣行
労働法および関係法規の順守、雇用の安定の配慮、労働者の権利の保護、非正規労働者の保護、現地の雇用の配慮。労働基準・労働協約の尊重、公正な労働条件の確保、適正な賃金の確保、適切な労働時間の実現。労使・政府の社会対話、団結権の尊重、労働における安全衛生の推進。能力開発と能力増進(キャリアアップ)の機会提供、健康・福祉増進。
④環境
環境汚染の予防。持続可能な資源の利用。気候変動の緩和と適応。環境保護、生物多様性・自然生息地の回復。
⑤公正な事業慣行
汚職防止。責任ある政治関与。公正な競争。取引先(バリューチェーン)における社会的責任の推進。財産権の尊重。
⑥消費者に対する課題
公正な販売活動(マーケティング)、事実に即した偏りのない情報提供、公正な契約慣行。消費者の安全と衛生の保護。持続可能な消費。消費者サービスと支援、苦情と紛争の解決。消費者データ保護とプライバシー尊重、消費者の必要不可欠なサービスに関する情報入手。消費者教育と意識向上。
⑦地域社会への参画と地域社会の発展
地域社会への参画。地域社会の教育と文化の発展。雇用創出と技能開発。技術開発および技術に関する情報入手。富および所得の創出。健康への配慮。社会的投資。

(七つの行動原則)
①説明責任:組織は、自らが社会・経済・環境に与える影響について説明責任を負うべきである。
②透明性:組織は、社会・環境に影響を与える自らの決定および活動に関する情報を公開し、透明であるべきである。
③倫理的行動:組織は、倫理的に行動すべきである。
④組織と利害を共有する関係者たち(ステークホルダー)の利益の尊重:組織は、組織と利害を共有する関係者たち(ステークホルダー)の利益を尊重し、よく考慮し、対応すべきである。
⑤法の支配の尊重:組織は、法の支配の尊重が義務であると認めるべきである。
⑥国際行動規範の尊重:組織は、法の支配原則に従うと同時に、国際行動規範も尊重すべきである。
⑦人権の尊重:組織は、人権を尊重し、その重要性と普遍性の双方を認識すべきである。
(紀国正典要約)


国連「ビジネスと人権に関する指導原則:保護、尊重および救済枠組実施のために(ラギー報告)」(2011年)

人権の保護・尊重・救済の枠組みを実施するために、国家と企業を対象に策定され、国際連合で承認された原則です。国家と企業に対し人権を順守し救済するための具体的で有効な原則を詳細に定めています。この原則は、ISO26000やOECD多国籍企業ガイドラインの改定にも反映されています。また次に紹介する「子供の権利とビジネス原則」(2012年)は、その原則を子どもの人権に応用して、企業に子どもの人権順守を求めたものです。詳細な長文ですので、主要な点を抜粋して紹介いたします。

国連:ビジネスと人権に関する指導原則(2011年)
この指導原則は、すべての国家とすべての企業に適用される。すべての企業とは、その規模、業種、拠点、所有形態および組織構成に関わらず、多国籍企業、およびその他の企業を含む。

(Ⅰ.人権を保護する国家の義務)
1.国家は、その領域および/または管轄内で生じた、企業を含む第三者による人権侵害から保護しなければならない。そのために、実効的な政策、立法、規制および裁定を通じてそのような侵害を防止し、捜査し、処罰し、そして補償するために適切な措置をとる必要がある。
3.保護する義務を果たすために、国家は次のことを行うべきである。
a.人権を尊重し、定期的に法律の適切性を評価し、望ましい実績との隔たりがあればそれに対処することを企業に求めることを目指すか、またはそのような効果を持つ法律を執行する。
b.会社法など、企業の設立および事業活動を規律するその他の法律および政策が、企業に対し人権の尊重を強制するのではなく、できるようにする。
c.その事業を通じて人権をどのように尊重するかについて企業に対し実効的な指導を提供する。
d.企業の人権への影響について、企業がどのように取組んでいるかについての情報提供を奨励し、また場合によっては要求する

(Ⅱ.人権を尊重する企業の責任)
11.企業は人権を尊重すべきである。これは、企業が他者の人権を侵害することを回避し、関与する人権への負の影響に対処すべきことを意味する。
13.人権を尊重する責任は、企業に次の行為を求める。
a.自らの活動を通じて人権に負の影響を引き起こしたり、助長することを回避し、そのような影響が生じた場合にはこれに対処する。
b.たとえその影響を助長していない場合であっても、取引関係によって企業の事業、製品またはサービスと直接的につながっている人権への負の影響を防止または軽減するように努める。

(Ⅲ.救済の手続き保証)
・国家基盤型の司法的制度
26.国家は、企業活動に関連した人権侵害に対処する際に、国内の司法制度の実効性を確保するため、救済への手続き拒否になるような法的、実際的およびその他これに関連するような障壁を減らすための方策を考えるなど、しかるべき手段をとるべきである
・国家基盤型の非司法的苦情処理制度
27.国家は、ビジネスに関連した人権侵害を救済するための包括的な国家制度の一部として、司法的制度と並行して、実効的で適切な非司法的苦情処理制度を設けるべきである
・非国家基盤型の苦情処理制度
28.国家は、ビジネスに関連した人権侵害を取り扱う、実効的な非国家基盤型苦情処理制度の利用を促進する方法を考慮すべきである
30.産業団体、多方面にわたり利害を共有する関係者たち(マルチステークホルダー)、およびその他が関わる協働型の取組みで人権に関連する基準の尊重を基礎にするものは、実効的な苦情処理制度を備えているべきである。
(紀国正典要約)


国際NGOセーブ・ザ・チルドレン、国連グローバルコンパクト、ユニセフの策定した「子供の権利とビジネス原則」
(2012年)

国連「ビジネスと人権に関する指導原則:保護、尊重および救済枠組実施のために(ラギー報告)」(2011年)の原則を、子どもの人権に応用して、企業に子どもの人権順守を求めたものです。

子供の権利とビジネス原則(2012年)
①子どもの権利を尊重する責任を果たし、子どもの権利の推進に係わる。
②すべての企業活動および取引関係において児童労働の撤廃に寄与する。
③若年労働者および子どもの親や世話をする人々に、働きがいのある人間らしい仕事を世話する。
④すべての企業活動および施設などにおいて、子どもの保護と安全を確保する。
⑤製品とサービスの安全性を確保し、それらを通じて子どもの権利を推進するよう努める。
⑥子どもの権利を尊重し、推進するような販売活動(マーケティング)や広告活動を行う。
⑦環境との関係および土地の取得・利用において、子どもの権利を尊重し推進する。
⑧安全対策において、子どもの権利を尊重し、推進する。
⑨緊急事態により影響を受けた子どもの保護を支援する。
⑩子どもの権利の保護と実現に向けた地域社会や政府の取り組みを補強する。
(紀国正典仮訳)


環境金融行動原則起草委員会「持続可能な社会の形成に向けた金融行動原則(21世紀金融行動原則)」(2011年)

中央環境審議会「環境と金融に関する専門委員会(委員長:末吉竹二郎・国連環境計画金融イニシャティブ特別顧問)」が2010年に出した報告書『環境と金融のあり方について―低炭素社会に向けた金融の新たな役割―』において、「環境金融行動原則」の策定が提唱されました。これを受け、末吉竹二郎氏を発起人として、その趣旨に賛同した金融機関が起草作業にかかわり、2011年に原則とガイドラインが採択されました。以下、その原則です。2014年7月段階では、193の金融機関が署名しています。

持続可能な社会の形成に向けた金融行動原則(2011年)
①自らが果たすべき責任と役割を認識し、予防的アプローチ(予防的方法)の視点も踏まえ、それぞれの事業を通じ持続可能な社会の形成に向けた最善の取組みを推進する。
②環境産業に代表される「持続可能な社会の形成に寄与する産業」の発展と競争力の向上に資する金融商品・サービスの開発・提供を通じ、持続可能なグローバル社会 (地球的社会)の形成に貢献する。
③地域の振興と持続可能性の向上の視点に立ち、中小企業などの環境配慮や市民の環境意識の向上、災害への備えやコミュニティー活動(地域活動)をサポートする。
④持続可能な社会の形成には、多様なステークホルダー(金融機関と利害を共有する利害関係者たち)が連携することが重要と認識し、かかる取組みに自ら参画するだけでなく主体的な役割を担うよう努める。
⑤環境関連法規の遵守にとどまらず、省資源・省エネルギー等の環境負荷の軽減に積極的に取り組み、サプライヤー(供給取引先)にも働き掛けるように努める。
⑥社会の持続可能性を高める活動が経営的な課題であると認識するとともに、取組みの情報開示に努める。
⑦上記の取組みを日常業務において積極的に実践するために、環境や社会の問題に対する自社の役職員の意識向上を図る。
*( )内は紀国による注記


GRI(Global Reporting Initiative)ガイドライン(1997年~2013年:G4版)

GRIとは国際的なサステナビリティ・レポーティングのガイドライン作りを使命とする非営利団体で、オランダに本部があります。1997年から、アメリカの環境保護団体のCERES(Coalition for Environmental Responsible Economies)と国連環境計画(UNEP)などが協力して、CSRレポートなどの開示原則とガイドラインの作成方法の検討を開始しました。2002年には、GRIガイドライン第2版を国連持続可能な開発に関する世界サミットにて発行しました。その後、2006年に第3版、2013年に第4版が発行されました。企業のCSR情報の開示についての実務的方法であるため、とても詳細な内容になりますので、その項目だけを紹介いたします。国際的にも、多くの企業がこのガイドラインに依拠してCSR報告書(社会的責任報告書)を作成している割合が高いといいます。

GRI(Global Reporting Initiative)ガイドライン(2013年G4版)
(経済)
経済的パフォーマンス、地域での存在感、間接的な経済影響、調達慣行。

(環境)
原材料、エネルギー、水、生物多様性、大気への排出、排水および廃棄物、製品およびサービス、法令順守(コンプライアンス)、輸送・移動、環境全般、供給取引先の環境評価、環境に関する苦情処理制度。

(社会)
・労働慣行とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)
雇用、労使環境、労働安全衛生、研修および教育、多様性と機会均等、男女同一報酬、供給取引先の労働慣行、労働慣行に関する苦情処理制度。
・人権
投資、非差別、結社の自由と団体交渉権、児童労働、強制労働、保安慣行、先住民の権利、人権評価、取引先の人権評価、人権に関する苦情処理制度。
・社会
地域、腐敗防止、公共政策、反競争的行為、法令順守(コンプライアンス)、供給取引先の社会への影響評価、社会への影響に関する苦情処理制度。
・製品責任
顧客の安全衛生、製品およびサービスのラベリング、販売活動に関する情報交流(マーケティング・コミュニケーション)、顧客プライバシー、法令順守(コンプライアンス)。
(紀国正典要約)


国連:持続可能な開発目標(2016年)
(Sustainable Development Goals:SDGs)

2015年9月25日から27日にかけて、ニューヨーク国連本部に161の国連加盟国の首脳が出席し、193の国連加盟国が合意したアジェンダ案「私たちの世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ(Transformation Our world:2030 Agenda for Sustainable Development )」を採択しました。そして2016年1月1日に発効しました。
この2030アジェンダは、2030年を目標年とし、地球環境を保全しつつ、あらゆる所の貧困をなくし、誰もが開発の恩恵を受けられるようにすることを、すべての国と組織そしてすべての人々に求めた地球的規模での行動計画です。
それは、宣言、17の持続可能な開発目標と169項目の具体的数値目標、実施手段と新たな地球的規模での協力関係に関する部会および再検討と追跡調査の枠組みから構成されています。

条約ではないので法的拘束力はありませんが、全会一致で採択されており、各国が目標の達成に努めるという約束を表明しております。すべての国がこの開発目標の達成に向けて、各国独自の持続可能な開発に関する政策、計画、プログラムを作成すること、その進捗状況を追跡し検証することおよびそれに必要なデータを整備することが求められています。2030アジェンダの成否は、各国政府の意欲と指導力および各国の地域や組織そして市民がどれだけそれを後押しするかにかかっているのです。

2030アジェンダは、以下に紹介する17の目標が示しているように、実に包括的で相互に関連する多面的な内容で構成されています。これには、1992年の国連環境開発会議が採択した「地球環境保全に関する行動計画:アジェンダ21」、2002年の「持続可能な開発に関する世界首脳会議」、2010年の「ミレニアム開発目標(MDGs)」、2012年の「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」などの成果およびそれらの会議に集った各種のNGO(非政府国際組織)・NPO(非営利民間組織)や世界の市民の英知が結集されているのです。

国連:持続可能な開発目標(2016年)
(Sustainable Development Goals:SDGs)
目標1. あらゆる場所のあらゆる形での貧困を終わらせる。
目標2. 飢餓を終わらせ、食糧の安定確保と栄養改善を実現し、持続可能な農業を推進する。
目標3. あらゆる年齢のすべての人々に健康な生活を保証し、福利を促進する。
目標4. すべての人々に、誰もが恩恵を受ける公平な質の高い教育を保証し、生涯学習の機会を促進する。
目標5. 男女の平等を実現し、すべての女性および少女が発達能力(エンパワーメント)を身に着けられるようにする。
目標6. すべての人々が水と衛生設備を利用でき、それを持続的に管理できるようにする。
目標7. すべての人々が、安価で信頼できる持続可能な最新エネルギーを利用できるようにする。
目標8. 誰もが恩恵を受ける持続可能な経済成長を進め、すべての人々に完全雇用と十分な収入が得られる雇用を保証し、働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)を促進する。
目標9. 強固な生活・生産基盤を構築し、誰もが恩恵を受ける持続可能な産業化を促進し、技術革新の拡大を図る。
目標10. それぞれの国内における不平等および国家間の不平等を是正する。
目標11. 都市および人間居住地を、誰もが恩恵を受ける安全かつ強固で持続可能な様式に転換する。
目標12. 持続可能な消費と生産様式を確固としたものにする。
目標13. 気候変動とその影響に立ち向かうため緊急行動を起こす。
(国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が、気候変動に対する国際交渉を行うにあたっての国際的なそして政府間対話の最も重要な公開討論の場であると認識している。)
目標14. 持続可能な開発のために海洋と海および海洋資源を保全し、持続的に利用できるようにする。
目標15. 地球生態系を保護し回復させ、その持続可能な利用を推進し、森林を持続可能に管理し、砂漠化を防止し、土地の劣化を止めて回復させ、生物多様性が失われるのを阻止する。
目標16. 持続可能な開発のために平和で誰もが恩恵を受ける社会の実現を促進し、すべての人々に司法救済の道を保証し、あらゆる基準からみて、実効性があり責任をもち誰もが恩恵を受ける諸制度の構築を図る。
目標17. 持続可能な開発のための実施手段を強力なものにし、地球的規模での協力関係(グローバル・パートナーシップ)を活性化する。
(紀国正典仮訳)

(訳注:日本の国際連合広報センターと日本外務省の仮訳は目標4、8、9、11、16の原文における“inclusive”を「包摂的な」と訳している。しかしこの英単語は欧米ではユニバーサルデザインの視点で使われており、「どのような状況にある誰にも利益や幸福が行き渡る」という意味である。ジーニアス英和辞典をみても、“inclusive”には、①「…を含めて」、②「包括的な」、③「〈施設・組織などが〉すべての人に開放された」との三つの意味があるが、②ではなく③の意味合いのある日本語が適切である。それゆえわたしは、「誰もが恩恵を受ける」と訳すべきものと考えた。国連:持続可能な開発目標のスローガンは「誰も置き去りにしない」ことであるので、それも考慮すればこの訳がよりふさわしい。したがって目標4、8、9、11、16の原文における“inclusive”を、「誰もが恩恵を受ける」と訳した。また国際連合広報センターと外務省の仮訳は、目標5の原文における“gender equality”を「ジェンダーの平等」あるいは「ジェンダー平等」と訳しているが、即座にはわかりにくい直訳である。英和辞典によればこの二つの英単語で「男女平等」となる。「ジェンダー」という用語に、社会的な性差別を撤廃し女性の人権擁護を推進する特別な意味があることを承知で、目標5を誰にも直感的に分かるように、「男女の平等」と訳した。)


(2016年11月14日執筆)


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