紀国セルフ・アーカイブ「公共性研究」

このたび、紀国のセルフ・アーカイブを、「公共性研究」という名称をつけて、本Webサイトのこのページに、開設することにいたしました。

「セルフ・アーカイブ‘Self-ArXiv’」とは、執筆論文を学術誌(ジャーナル)で公開する前に、オンライン上で事前公開し、インターネットを通じて自由に、無料で、広く閲覧できるようにすることです。
このような研究情報の公開方法を、「プレ・プリント(査読前公開)」ともいいます。学術誌(ジャーナル)で公開する方法が、「ポスト・プリント」です。

インターネットの国際的な普及とともに、このセルフ・アーカイブあるいはプレ・プリントは、科学技術情報の公開制度の重要手段となり、今ではポスト・プリントと肩を並べるほどに発展してきました。

始まりは、物理学分野でした。そこでは学術文献に掲載する前の専門家による査読(レフリー制度)に時間がかかり、ひどい時には一年以上もかかることがあったようです。それで、査読前にオンラインで研究論文を事前公表し、インターネットを通じて研究情報を迅速に共有する試みが、自然発生的に生まれました。
そしてこれを組織的に実施するプレ・プリント・サーバーが立ちあがるようになり、1991年には数学・物理学分野で「arXiv(アーカイブ)」が、2013年には生物学分野で「BioRxiv(バイオアーカイブ)」が、2017年には化学分野で「ChemRixv(ケムアーカイブ)」が、そして2019年には医学系で「MedRxiv(メドアーカイブ)」が現れ、今では2020年時点でこれが50種類以上あるという状況になっています。コロナのパンデミックでは、このプレ・プリント・サーバーによって、迅速な情報交流と共有ができ、コロナ対応に大きな威力を発揮したそうです。

セルフ・アーカイブあるいはプレ・プリントの利点は、第1に、なんといっても研究情報の公開の迅速性です。これによって研究者は最初に研究価値を発見したことを容易に証明できることです。つまりより早く先取り栄誉を確保できるのです。第2に、査読者の狭い専門性や価値観をこえて、幅広い研究者や読者から多様な意見を聞くことができることです。これによって豊かなフイードバック(意見交流)が可能になるのです。第3に、情報のオープン・アクセスに寄与できることです。オープン・アクセスとは、誰もがいつでも自由に無料で情報にアクセス(接近・利用)できることであって、情報のユニバーサルデザイン化ともいいますが、研究論文のインターネット公開により、これを進めることができることです。第4に、研究情報の広い交流と共有が迅速に進むことによって、科学技術の発展に貢献できることです

わたしがセルフ・アーカイブに踏み出そうとしたきっかけは、これまでわたしを研究者として育ててくれた高知大学経済学会『高知論叢』への研究論文の投稿と公開に制約がかかったことです。投稿論文の完全公表まで、足かけ2年もかかるという事態になったのです。また『高知論叢』公表後も、それが高知大学リポジトリに掲載されインターネットでアクセス可能になるまでには、さらに数ヶ月かかったからです。それで今回この機会に、思い切って、セルフ・アーカイブを立ちあげることにしたのです。

とてもうれしいことに、日本においても、総合的なプレ・プリント・サーバーの運用が、本年2022年3月から始まりました。それが、国立研究開発法人・科学技術振興機構(JST)が運営を開始した「Jxiv(ジェイカイブ)」です。これのすごいところは、自然科学の分野だけでなく、人文科学、社会科学そして学際総合領域をふくめ、すべての研究分野を網羅していることです。もちろん経済学も含まれています。また使用言語も英語に加え、日本語でも可能なのです。さらに無料というのは、年金生活者にはありがたいことです。

このJxivのプレ・プリントサーバーへの投稿にリンクを貼ることによって、この「公共性研究」ページを充実させていきたいと考えています。どうかよろしくお願い申し上げます。

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