紀国正典著「第1次世界大戦後ドイツのハイパー・インフレーション(2) ―インフレーションがもたらした経済的・社会的な作用と結果の検証」(プレ・プリント論文:Jxiv,2023/08/31)の公開とダウンロードのご案内

紀国が執筆をすすめてきました論説「第1次世界大戦後ドイツのハイパー・インフレーション(2) ―インフレーションがもたらした経済的・社会的な作用と結果の検証―」を、日本の総合的プレ・プリント・サーバーのJxivに投稿し、それがこのたび公開されることになりました。

次のJxivのDOI(Digital Object Identifier:インターネット上のドキュメントに恒久的に与えられる識別子)を入力してもらうか、あるいはこれをクリックしてもらうと、この論文のダウンロード画面が開きます。

https://doi.org/10.51094/jxiv.494

本論文の要旨は、次のとおりです。

「本論文は、第1次世界大戦後ドイツのハイパー・インフレーションが、ドイツの経済と社会生活および政治におよぼした作用と結果について、実証解明したものである。C.B.チュローニ氏、圓地與四松氏、J.W.アンジェル氏という、先人の勝れた研究成果を整理して引用紹介した。
第1章では、インフレーションがドイツ経済に、強制在庫、収奪貯蓄そして収奪輸出を引き起こし、一過性のインフレ・バブルを発生させただけのものだったことを、解明した。第2章では、インフレーションが不当な富の再分配を生み出したことと、その六つの特質を解明し、それが労働者階級、中産階級そして一般民衆にひどい貧困化をもたらしたことと、この貧困化の諸事例を示した。第3章では、インフレーションが産業資本家を大儲けさせ、金融資本家の犠牲のうえに投機資本家を横行させ、生産組織の集積・集中が大きく進んだこと、そして公債所有者を大収奪し、ワイマール共和国の崩壊に至らしめたことを、解明した。付録資料として、超物価高によるドイツ国民の貧苦とインフレ成金の享楽などの実写画像を多数添付した。
本論文が到達した結論は、リフレ論(異次元金融緩和論・アベノミクス)が主張するところの、〈インフレーションは景気を浮揚し、国民生活を豊かにする〉という命題は、実証的にそして理論的にも、あり得ない空論である、ということである。」

本論文の目次

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はじめに

第1章 ドイツの経済にインフレーションがおよぼした作用
インフレ有用効果はあるのか、ないのか
生産量は増大し失業率も減少
インフレ・バブル経済
インフレ・バブル経済の発生とその作用過程
(a)表面的消費需要の膨張:強制在庫
(b)資本家のインフレ利得による生産の表面的・不均衡的膨張:収奪貯蓄
(c)マルク安による表面的輸出需要の膨張:収奪輸出
インフレ・バブル経済の非生産性と崩壊(経済恐慌)

第2章 ドイツの社会生活にインフレーションがもたらした作用
インフレーションによる不当な富の再分配
労働者階級の貧困化
中産階級の貧困化と没落
貧困化の諸事例、犯罪の増加、人口の減少など
道徳・文化の劣化と退廃

第3章 ドイツの生産組織と政治にインフレーションがもたらした作用
産業資本家の利益
金融資本家の没落
投機資本家の横行と生産組織の独占的高度化
政府の巨額の債務者利益(政府による収奪)
ワイマール共和国の崩壊

おわりに
注記
参考文献

付録添付画像

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ダウンロードしていただいたPDFファイルには、しおり機能を付けてありますので、それをクリックすれば、自由に必要な場所に飛ぶことができます。

付録添付画像には、ハンス・オスワルトによるハイパー・インフレーション下のドイツの実際の生活状況を写した画像を多数掲載しました。これだけでも見ていただける価値があります。

お詫び:5月に開催された国際経済学会関西支部の定例研究会において、この論文の骨子を報告いたしましたが、そのとき、論文は6月にはアップロードできると宣言してしまいました。当時の予定では6月中には完成できるはずだったのですが、チュローニ氏の原書が難解でその引用方法に苦慮し、またJxivの投稿手続きが煩雑で、何度か訂正と差し戻しがあって、ようやく公開にこぎ着けました。わたしの研究報告を聞いていただたいた国際経済学会のみなさまに、長引いたことのお詫びを申し上げます。

紀国正典著「第1次世界大戦後ドイツのハイパー・インフレーション(1)―大規模な貨幣破産・財政破産の発生要因についての解明―」(プレ・プリント論文、2023年1月改版)の公開とダウンロードのご案内

紀国正典著「第1次世界大戦後ドイツのハイパー・インフレーション(1)―大規模な貨幣破産・財政破産の発生要因についての解明―」(プレ・プリント論文:2023年1月改版)をアップロードいたしました。

次をクリックすれば、ダウンロードしていただけます。

 

アップロード用の原稿作成や手続きは初めてのことでして、昨年11月にアップロードした原稿には、その後、見なおしてみると校正ミスがたくさんありました。すでにダウンロードされたみなさまには、深くお詫び申し上げます。

今回の論文(改版)にあたっては、校正ミスを訂正するとともに、一部加筆させていただきました。

本PDF論文の引用表示は、次のようにお願いいたします。

紀国正典「第1次世界大戦後ドイツのハイパー・インフレーション(1)―大規模な貨幣破産・財政破産の発生要因についての解明―」(プレ・プリント論文:2023年1月改版)、金融の公共性研究所サイト(http://finance-public.org)、紀国セルフ・アーカイブ「公共性研究」ページ、2023年1月11日、でお願いいたします。

本論文の構成は次のとおりです。
はじめに

第1章 ハイパー・インフレーションの発生と展開
ハイパー・インフレーションの発生と展開過程

第2章 ハイパー・インフレーションの発生要因についての諸説の検討
ドイツ政府、ライヒスバンクなどとチュローニ氏の見解の相違
マルク紙券の発行を続けた財政金融政策が基本要因とのチュローニ氏の見解
チュローニ氏の見解と貨幣数量説(数量増加減価論)
チュローニ氏を批判しつつ基本は継承した吉野俊彦氏の見解
吉野俊彦氏の見解と貨幣数量説(数量増加減価論)
チュローニ氏と吉野俊彦氏の研究成果の継承と問題点
大内兵衛氏の調査研究をふまえての問題点の克服

第3章 ハイパー・インフレーションの発生要因についての紀国の見解

おわりに

注記

参考文献

付表(第2章の参考統計データ、第3章の参考統計データ)

このようなテーマをとりあげた意義と論文概容を、本論文の「はじめに」で、次のように述べております。

本論文は、第1次世界大戦後ドイツのハイパー・インフレーションの発生要因を考察したものである。

本論文の意義と課題は、次の五つである。
一つは、高度な公共財の崩壊の実際の状況を、人類の歴史的な経験をもとに明らかにすることである。
多くの人間が利用する貨幣と財政は、共同利用という側面からみてきわめて高度な公共財である。これを持続的に管理する共同制御がうまくいけば、それがもたらす共同利益は大きい。しかし、その持続的管理と制御の失敗である国家破産が発生すれば、それによる共同損失の範囲は広く、その規模も甚大なものとなる。このことを、現実に発生した第1次世界大戦後ドイツのハイパー・インフレーションという歴史的経験をもとに、検証してみたいのである。

二つめは、ハイパー・インフレーションは、特殊な要因で発生したのでなく、いつでもどこでも容易に発生するものであることを、第1次世界大戦ドイツのハイパー・インフレーションの歴史的経験と材料をもとに、明らかにしてみることである。

三つめに、第1次世界大戦後ドイツのハイパー・インフレーションを取り上げたのは、これに関して信頼できる正確なデータが残っているからである。こデータを利用することによって、より真実に近いところで、インフレーションの実状と発生要因を解明できるのである。
第1次世界大戦後のドイツでは、連合国賠償委員会の命令で統計の整備と公表が命じられていた。この措置によって信頼できる正確なデータが残されたのである。これまで歴史上何度もハイパー・インフレーションを発生させてきたロシアやハンガリーさらに途上国では、統計データの入手が困難であるうえ正確度で問題点も多い。しかし当時のドイツについては、上記の措置により、きわめて信頼度の高いデータを利用できるのである。
またこのような事情から、当時のドイツでは、口コミや伝聞情報だけでなく、正確な公表情報にもとづいて、裁定取引(不利な取引から有利な取引に資金を移す取引)が行われていたと推測できる。このことによって貨幣減価もかなり正確な数値情報にもとづいて発生していたであろうと考えられる。なお重要なデータは、本論文の末尾に付表として残しておくことにした。今後この問題を議論したり、研究を深めるための基礎データとして役立つであろうからである。

四つめに、ハイパー・インフレーションは、貨幣数量説論者がいうように、貨幣数量の増加が直接的に引き起こしたものでないことを明らかにすることである。

五つめは、アベノミクス国家破産がハイパー・インフレーションを招くであろうことを明らかにすることである。これについてはすでに、拙稿の紀国正典「アベノミクス国家破産(1)―貨幣破産・財政破産―」において実証と分析を試みたが、これをさらに歴史的な経験をふまえて確認してみたいのである。
ただし安部晋三氏は、選挙遊説中の2022年7月8日に、悪質宗教団体(世界平和統一家庭連合:旧統一教会)に深く関与していたことによる銃撃で亡くなった。これによって、アベノミクスの影響力は低減するかもしれない。しかし、アベノミクスを信奉し積極財政を主張する人たちの影響力はいまだに強大である。またアベノミクスの残した負の遺産は、容易に処理できないほど巨大なものであり、アベノミクス国家破産の恐れがなくなったわけではない。

以下、第1章の「ハイパー・インフレーションの発生と展開」では、第1次世界大戦後ドイツのハイパー・インフレーションの発生と展開過程を、財政金融関係のデータと政治・国際関係の出来事を簡潔に紹介することで、概観してみる。

第2章の「ハイパー・インフレーションの発生要因についての諸説の検討」においては、ドイツのハイパー・インフレーションについての3人の論者の研究成果を紹介しつつ検討する。C.B.チュローニ氏、吉野俊彦氏、大内兵衛氏の3人である。
チュローニ氏は、1931年にドイツ・インフレーションについての著書をイタリアで刊行し、これはその後1937年にM.E.Sayersによって英訳されたが、「ドイツ・インフレーションについての定本」との高い評価を得たのである。氏は当時、ミラノ大学・カイロ大学教授にあって、1920年から29年に至る間は連合国賠償委員会ベルリン駐在委員、ドイツ輸出統制局長官などの要職を歴任し、世界史上未曾有のハイパー・インフレーションの実際を現場でまじかに見聞できた学者である。
吉野俊彦氏は、大平洋戦争末期に日本銀行調査局に在籍していたとき、時の政府からドイツインフレーションについての調査依頼を受け、優れた調査結果を残していたのであった。
大内兵衛氏は、東京帝国大学経済学部助教授(財政学講座)にあったとき森戸助教授筆禍事件に連座して失職し、大原社会問題研究所の嘱託となったが、1921年2月にドイツに留学し、当時のドイツについて調査研究する機会に恵まれた。この成果が大原社会問題研究所の研究調査パンフレット第1号として残っていたのであった。
またこの章では、貨幣数量説(数量増加減価論)についても、批判的に考察する。

第3章の「ハイパー・インフレーションの発生要因についての紀国の見解」では、3人の論者の研究成果の検討をふまえ、筆者の見解を明らかにする。「おわりに」では、本論文のまとめをおこなうとともに、今後の研究課題を提起する。

以上です。
ご笑覧いただければ幸いです。

ようやくアップロード手続きについてのノウハウを獲得しましたので、これからは校正ミスを出すことのないようにできると思います。

これからもよろしくお願い申し上げます。

 

お詫び:昨年11月30日にアップロードした論文「第1次世界大戦後ドイツのハイパー・インフレーション(1)」に校正ミスがありました。

昨年11月30日にアップロードした論文「第1次世界大戦後ドイツのハイパー・インフレーション(1)―大規模な貨幣破産・財政破産の発生要因についての解明―」に、大きな校正ミスがありました。

次の注記19)が欠けておりました。
「19)Turroni,The Economics of Inflation,1937、p.47より、東京銀行集会所調査課抄訳(p.24)を基本にしての紀国訳。」

すでにアップロードされたみなさまに、お詫びするとともに、この点を訂正していただくようお願い申し上げます。

追って、ミスを訂正した改版をアップロードいたします。

四校までしてこのようなミスが出たことに自分でも驚いていますが、かなり注意能力が衰えているようです。これからはこういうことにないように、さらに慎重に対処いたします。申し訳ありませんでした。

紀国正典著「第1次世界大戦後ドイツのハイパー・インフレーション(1)―大規模な貨幣破産・財政破産の発生要因についての解明―」(プレ・プリント論文)の公開とダウンロードのご案内

紀国正典著「第1次世界大戦後ドイツのハイパー・インフレーション(1)―大規模な貨幣破産・財政破産の発生要因についての解明―」(プレ・プリント論文)を、この「公共性研究」ページにおいて、事前公開いたします。

本論文についてご関心のある方は、このページから、本論文のPDFファイルをダウンロードしていただくことができます。

次のショートコードをクリックして、ダウンロードしてください。

 

 

本PDF論文の引用表示は、紀国正典「第1次世界大戦後ドイツのハイパー・インフレーション(1)―大規模な貨幣破産・財政破産の発生要因についての解明―」(プレ・プリント論文)、金融の公共性研究所サイト(http://finance-public.org)、紀国セルフ・アーカイブ「公共性研究」ページ、2022年11月、でお願いいたします。

本論文の構成と概容については、本Webサイトの「国家破産とインフレーション」ページをご参照ください。